今更だけど愛して止まない『羊たちの沈黙』の素晴らしさを伝えたい
目次
初めに
こんばんは、レクと申します。
今回はタイトル通り
【今更だけど愛して止まない『羊たちの沈黙』の素晴らしさを伝えたい】
をテーマに感想を交えつつ語らせていただきます。
『羊たちの沈黙』の記事が続いてしまって申し訳ないんですが、これは初めに語りたい内容の一つでした。
お許しください(笑)
有名な作品ですので、至る所で様々な方が感想を挙げられておられます。
先程も申し上げましたが、今更なのであらすじや登場人物、細かい設定等は省かせて頂くと共に、ネタバレありきで進めていきます。
興味のある方はお付き合いいただけましたら幸いです。
観たキッカケは不純な動機?
皆さん、初めての映画を観る時ってどういった理由で選ばれますか?
好きな監督や俳優陣、ジャンル、パッケージ、他人からのオススメ、高評価…etc.
その時の状況によって様々だと思います。
では、自分がこの『羊たちの沈黙』を観ようと思った理由は何か?
ジョディ・フォスターの可愛さ。
はい、これ一択でしたねー。
男ってそういう生き物。うんうん。
映画「羊たちの沈黙」より
こんな美女と毎日電話したい。
FBIアカデミー訓練生のクラリスを演じた若きジョディ・フォスターは女優業のトップを取ってやるぞ!くらいの必死な演技が好きです。
化物級のアンソニー・ホプキンス相手に根性が座ってます(笑)
当時、クラリス役の名前に挙がっていたのはミシェル・ファイファーだったんですよね。
しかし彼女がオファーを断った為、監督のジョナサン・デミはメグ・ライアンやジーナ・デイビスを候補に考えていたらしい。
監督は最後までジョディ・フォスターの起用に後ろ向きでしたが、配給会社からの要請もあり彼女をクラリス役に決定したという裏話があります。
つまり、もしかしたらクラリスはジョディ・フォスターではなかったかもしれないし、自分がここまで『羊たちの沈黙』を好きになる事はなかったかもしれない。ということです。
神がかった演技
映画「羊たちの沈黙」より
今作において最も印象的なのはアンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクター博士の怪演だろう。
僅か約16分(12分説あり)の出演でアカデミー主演男優賞を受賞。
誰もが認めるこの演技は正に神がかったものだと言えるかもしれません。
そして、この作品を観てアンソニー・ホプキンスを好きになったのも事実です。
しかし、この作品の凄い所は最も印象的であるアンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクターは脇役だということ。
あくまでレクター博士は事件解決への手助けであって、クラリスの抱えるバッファロー・ビル事件の本筋とは別なんです。
演技だけが見せ場ではない
タイトル『羊たちの沈黙』。
羊の意味とは?
原題で『the silence of the lambs』
lambとは本来、羊ではなく小羊のこと。
これももう様々な考察がされているので言及することはないんですが
この作品のあらゆる事象を小羊に準え喩えられているんですよ。
今作における本筋、バッファロー・ビル事件。
連続猟奇殺人鬼バッファロー・ビルの手口は殺してから皮を剥ぐというもの。
小羊たちも、殺されてから皮を剥がれ、皮細工の材料になります。
暴力事件の被害者のことを小羊と言ったりもしますね。
被害者キャサリンはバッファロー・ビルを前に身動きがとれない小羊です。
そして助け出されなければ、殺されて皮を剥がれる運命でした。
クラリスがレクター博士に、幼少期に預けられていた牧場での体験を話すシーン。
叔父はラム肉のために屠殺をしていただけですが、幼いクラリスには訳もなく子羊たちが殺されていたように見えたのだろう。
助けたいのに助けられなかった事実がトラウマとなっています。
つまり、バッファロー・ビルから被害者たちを救いたいのに救えないという焦りが過去のトラウマと繋がるんですね。
事件解決後のレクター博士の電話の問いかけで。
「小羊は鳴き止んだかね?」にも深い意味があると解釈しています。
一見、バッファロー・ビル事件を解決したクラリスは過去のトラウマと向き合えたように思える。
ここで、クラリスのトラウマ克服おめでとうと考えておられる方も多いですが、自分はもう一歩踏み込んだ先があると思っています。
何故なら、レクター博士の言葉は先を見通した狂気を含意したヒントだからです。
自分の解釈として、バッファロー・ビル事件を解決してもクラリスの中の小羊の悲鳴が止むことはない。
人間の記憶、特に嫌な記憶というものは消えることはないのです。
FBIの仕事を続ける限り、クラリスは新たな小羊に出会います。
そしてまた殺された小羊は永遠にクラリスの記憶に残ります。
クラリスのFBI捜査官としての人生は小羊の悲鳴の中で歩んでいくことになるのです。
『羊たちの沈黙』とは犯人と被害者の関係性を表しつつ、クラリスのトラウマを抉り、今後の生き方をも示唆する、これ以上ない言葉なんです。
ここまで徹底された脚本とタイトルの関係性。
素晴らしくないですか?(笑)
蛾が意味するもの
この蛾の背中に見える髑髏は芸術家サルバドール・ダリの女体で作られた髑髏なのはご存知でしたか?
フランスの写真家フィリップ・ハルスマンによる1951年の作品「In Voluptas Mors」より
女体で作られた髑髏は被害者の死体を示唆するもの。
ポスターデザインの口元にある蛾はバッファロー・ビルが飼っていたメンガタスズメという蛾の成虫で、この蛾はDeath's-head Hawkmothと呼ばれ、現れると不幸を呼ぶとされるもの。
バッファロー・ビル事件でも死体の口にこの蛾のサナギが押し込められていたことが重要な手掛かりとなっていましたが、ポスターの意味する蛾は性同一性障害であるバッファロー・ビルが被害者の皮を剥いで着飾ること、変身を隠喩し、口元へ配置することで沈黙を表しています。
素晴らしく芸術性の高いポスターデザイン。
秀逸すぎる!
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マイケル・コーン監督が『羊たちの沈黙』にインスパイアされた作品。
羊たちの沈黙のようなサイコサスペンスが好きな方にはオススメの映画です。
劣化版なところは否めませんが、個人的には好きな映画です。
『羊たちの沈黙』と見比べてみてもなかなか面白いと思います。
こちらのポスターデザインの蛾は『羊たちの沈黙』で使用されたメンガタスズメではなく、恐らくはオオクジャクサンという種類の蛾だと思われます。
オオクジャクサンは芸術家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホが弟のテオに宛てた手紙の中で描かれた「死人の頭 (la tête de mort)」という蛾の素描で有名です。
古くからこの蛾は死と結びつけられており、古代エジプトの棺の中には、この蛾とおぼしき蛾がそのふたの上に描かれたものがあると言います。
このポスターデザインも言うまでもなく『羊たちの沈黙』のオマージュであり、蛾は死を齎す不幸の象徴として表現されています。
伝わりますか?
ここまでつらつらと『羊たちの沈黙』について語ってきましたが、伝わりましたでしょうか?
結局、素晴らしさを伝えたいと言いながら作品に対する愛情を語っただけみたいになってしまいましたが(笑)
過去にご覧になったことがある方も今一度、ご覧になってみてください。
きっと他にも気付く点は沢山あるかと思いますよ?
ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございました。
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