小羊の悲鳴は止まない

好きな映画を好きな時に好きなように語りたい。

偏愛映画その2「ランダム 存在の確率」(ネタバレあり感想)

目次




初めに

こんばんは、レクと申します。

皆さんお待ちかね
偏愛映画パート2!

え?待ってない?すみません(笑)

今回の愛すべき映画は「ランダム 存在の確率」
ネタバレありで語らせていただいてます



あらすじ

『ランダム 存在の確率』
原題:Coherence
製作年:2013年
製作国:アメリ
上映時間:88分


あらすじ

彗星が接近した夜に集まった若者たちに起こる奇妙な現象を巧みな脚本で描き、シッチェス映画祭で脚本賞と審査員賞を受賞したSFスリラー。ミラー彗星が地球に最も近づく晩、8人の男女がホームパーティを開いていた。彼らが彗星の話題で盛り上がっていると、停電が発生し部屋の中が真っ暗になってしまう。外の様子を見に行った8人は、自分たちと全く同じ人々が、全く同じ家でパーティを開いているという信じがたい光景を目撃する。
ランダム 存在の確率 : 作品情報 - 映画.comより引用


予告編




魅力ポイント その1

SFというジャンルにおいて、代表されるのはスペース・オペラサイバーパンク、ロボットや超能力、時間など。

そんなSF映画の中でも低予算でストーリーにのみ注視作品。


今作の特徴としては目の前にもう一人の自分が存在する
どちらかと言えば「時間SF」にありがちな設定を「ハードコアSF」に扱った内容の作品だと思うのですが、ひと味違ったややこしさや違和感などを味わうことができます。


目の前にもう一人の自分が存在する
例えば、過去や未来にタイムトラベルし、過去や未来の自分と遭遇する。
ここには必ずタイムパラドックスが生じます。
今作はタイムトラベルしている訳では無いので、そういった矛盾がなくなると言ったメリットもあるかもしれませんね。



魅力ポイント その2

"シュレーディンガーの猫"
を題材として描かれる映画。


シュレーディンガーの猫とは

蓋のある箱を用意し、この中に一匹の猫を入れます。
箱の中には猫のほかに放射性原子とそれが分裂したかどうかを検出する装置と毒ガスが入っており、原子が分裂すると検出器が作動して毒ガスが出るような仕組みになっています。
もちろん毒ガスが出ればその猫は死にます。
このとき、原子が分裂する確率は50%です。

さて、この箱の中の猫はどうなっているでしょう?
普通に考えれば、箱の中に入っている猫は「生きているか死んでいるかのどちらか」となります。

しかし、量子論では箱の中身が観測されるまで、箱に入っている猫は蓋が開けられるまでは「生きている状態と死んでいる状態が同時に存在している。」と考えられるのです。



参考までに。
汚い字ですみません。


左図のように、箱が閉じられた状態では箱の中の猫は生と死が重なった状態です。(赤色の部分)

箱が開けられると右図のように生きてるか死んでるかのどちらか一方へと収束します。


今作の設定では二つの結果が重なった状態。
つまり、生きた猫と死んだ猫が同時に存在する状態ということになります。

右図の開封までの赤い線の部分が彗星の接近中。
つまり、作中で流れる時間だと思ってもらえればわかりやすいかと思います。



魅力ポイント その3

考察のし甲斐がある何度も観返したくなる脚本と演出。


舞台は一つの家屋とその周辺なんですが、この閉鎖的空間での行動の一つ一つがまた無数の選択肢を生むんです。
8人の登場人物それぞれがどの世界線の人間なのか。
推測できません(笑)

無限に分岐する世界線
細かい伏線、すべて回収仕切れてない部分もありますが、一つ一つの伏線回収も観ていて楽しい。



また、演者は完璧な台本は渡されず、その都度各々にメモが渡されて演じていたそうです。

これが、小難しい脚本の中でパニックを起こしたり口論になるシーンなどで最も演出が活かされてます。


実際、エムには「絶対に外に出すな」というメモが。
ケヴィンには「外に様子を見に行く」というメモが渡され、互いに口論するシーンはリアルな口論だったと言うわけです。

他にも内容を全て知らされずに演技させていたので、リアルな反応が良いエッセンスになってるんですよ。


何度も観返して気付く点なんですが、噛み合わない会話の内容も、さも他の世界線から来た人間ではないのか?と思わせる演出に見えてしまい、役者自身の驚きや疑問もまたリアルなものなので、何が真実で何が真実ではないのか分からなくなってきます。



総評

所謂、密室推理劇なんですがこの映画の面白いところは魅力ポイントでも語りましたが、"シュレーディンガーの猫"を映画にしてしまったこと。

平行世界の混在、"シュレーディンガーの猫"の思考実験を映像化したまるでパズルのように知的好奇心を刺激して止まない作品だ。
扱う題材と小難しい脚本と伏線、膨大な台詞に万人受けするような作品ではないが、これSFスリラーの傑作ではないか?


声を大にして言いたい。

こういう映画、大好物です!


「あなたの脳はついてこられるか?」

このキャッチフレーズにつられて観ましたが、物質依存と空間依存、無数の想像や憶測が展開の可能性を広げ、非常に綺麗に整理された脚本が素晴らしく総じて高水準の秀逸な映画でした。


作中で挙げられる映画スライディング・ドア

一瞬の差で分岐する二つの現実が描かれる。
こちらもなかなか面白い作品です。
興味のある方は一度ご覧になってみては如何でしょうか?



余談 その1

お先に申し上げておきますが、超余談になります。
今作にはほとんど関係ない話です(笑)



今いる世界線に他の世界線の同一人物が複数存在する

少年コミックで代表される作品「Dragon Ball」。

DRAGON BALL 全42巻・全巻セット (ジャンプコミックス)

DRAGON BALL 全42巻・全巻セット (ジャンプコミックス)

その作品内でもこの事象が生じています。
ドラゴンボール超の設定は考慮していません。

ただ単にDB人造人間編を語りたいだけなんですが(笑)


ご存知の通り、ベジータの息子であるトランクスは未来からタイムマシンに乗って悟空たちのいる時間軸へとタイムトラベルしてきます。


アニメ「Dragon Ball Z」より


しかし、実際はトランクスだけがタイムトラベルしてたわけじゃないんですよね。
そうです。人造人間編でのラスボス的存在、セルです。


漫画「Dragon Ball」より



簡単に図にして纏めました。

ト…トランクス
悟…悟空たちZ戦士
人…人造人間17、18号
セ…セル

世界線A…悟空たちの現在。
世界線B…トランクスのいた未来。
世界線C…セルのいた未来。

  1. 世界線Bの悟空Bは心臓病で死亡。Z戦士も戦死。
  2. 世界線BからトランクスBが世界線Aへと来る。
  3. その一年前、世界線Cで人造人間17、18号Cを倒したトランクスCを倒し、タイムマシンを奪ってセルCが世界線Aに来ていた。
  4. 世界線AのセルAは未熟な段階で処分される。
  5. 世界線Aの人造人間17、18号AはセルCに吸収され、完全体となったセルCは悟空Aたちによって倒される。(悟空は死亡)
  6. セルCから解放された人造人間17、18号Aが善化。
  7. 世界線Aで修行したトランクスBが未来(世界線Bの10年後)へ戻って、世界線Bの人造人間17、18号BとセルBを倒す。


恐らく世界線Cのセルが世界線Aへと来たことが原因で世界線Aの歴史が変わってしまったとトランクスも話していました。
人造人間19、20、16号の存在が1番顕著に現れた点ではないだろうか。

そうです、これが「バタフライ・エフェクト」です。

この作品は有名ですね!

バタフライ・エフェクトとは
ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起こる。
初期条件の僅かな違いが、将来の結果に大きな差を生み出す、という意味のカオス理論の一つ。

少しの選択肢の違いで人生ってのは大きく分岐する。
その都度付きまとうのが後悔であり、回避はできない。
だからこそ、後悔のない人生というより、失敗や後悔も含めて自分の人生だと言えるような人生を送りたいものです。


3つの世界線が絡み合いながら、トランクスとセルの双方は今作「ランダム 存在の確率」のように一つの世界線に違う世界線の同一人物が複数存在しているんです。


と、物凄く脱線してしまってますが、無理矢理繋げました(笑)

過去や未来へタイムトラベルすることを題材とした時間SFではもう一人の自分と遭遇するという設定が使われることがあります。
パラレルワールドという共通点があるので、こういった内容が好みの方は楽しめるのではないかなあと思います。



余談 その2

今作「ランダム 存在の確率」では彗星が原因で不可解な現象が起こるという内容でした。
他にも彗星を扱った内容の作品はいくつかあります。



映画「空気の無くなる日」より

1910年に実際に起こったハレー彗星の接近によるパニックを題材に描かれた作品。

このように地球に衝突するかもしれないというパニック映画は幾つも存在します。


また

話題となった「君の名は。」では、1200年ぶりに地球に接近するという架空の彗星「ティアマト彗星」をめぐる不思議な出来事が描かれてましたね。



同様に、彗星ではありませんが天体が原因で不可解な現象が起こるSF作品を一つオススメしておきます。

オーロラの彼方へ [DVD]

オーロラの彼方へ [DVD]

ある夜にオーロラが齎した親子を繋ぐ奇跡。
父親を亡くしたあの日からの親子2人に無かった思い出を作ってくれる。
失われた父親との時間を一気に埋めてくれる。
そんな心温まるタイムリープSF映画です。



終わりに

SF作品は、当たり前ですが非現実的な話が多い。
寧ろ現実味がないからこそ憧れるものだと思う。
だからこそ、非日常の中に日常的な人間味を出すことでよりリアルに描いていると思います。

もう一度言います。

こういう映画、大好物です!


この監督の次回作はパブロフの犬を映画化して欲しい(笑)

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。