小羊の悲鳴は止まない

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命の輝きと愛を描く(「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」ネタバレ無し感想)

目次




初めに

こんばんは、レクと申します。
今回は「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」について書いています。

えー今日はですね、あまり好きではない映画館(そこでしか上映してない)で観たんですが、昼間に行ったからかまだ客質はマシでしたね。
その分、この映画に集中して観ることが出来ました(笑)

この記事はネタバレはありません。



作品概要


原題:Maudie
製作年:2016年
製作国:カナダ・アイルランド合作
配給:松竹
上映時間:116分
映倫区分:G


解説

カナダの女性画家モード・ルイスと彼女の夫の半生を、「ブルージャスミン」のサリー・ホーキンスと「6才のボクが、大人になるまで。」のイーサン・ホークの共演で描いた人間ドラマ。カナダ東部の小さな町で叔母と暮らすモードは、買い物中に見かけた家政婦募集の広告を貼り出したエベレットに興味を抱き、彼が暮らす町外れの小屋に押しかける。子どもの頃から重度のリウマチを患っているモード。孤児院育ちで学もないエベレット。そんな2人の同居生活はトラブルの連続だったが、はみ出し者の2人は互いを認め合い、結婚する。そしてある時、魚の行商を営むエベレットの顧客であるサンドラが2人の家を訪れる。モードが部屋の壁に描いたニワトリの絵を見て、モードの絵の才能を見抜いたサンドラは、絵の制作を依頼。やがてモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン大統領から依頼が来るまでになるが……。監督はドラマ「荊の城」を手がけたアシュリング・ウォルシュ。
しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス : 作品情報 - 映画.comより引用

予告編





実在した画家モード

この映画の存在を知るまで、正直モード・ルイスという画家がおられることを知りませんでした。
日本で取り上げられたことも少ないようで、日本人には馴染みのない画家なのかもしれません。


『しあわせの絵の具』サリー・ホーキンスのインタビュー - YouTubeより

モード・ルイス(Maud Lewis1903年-1970年)
カナダのフォーク・アートの画家である。田舎の風景、動物、草花をモチーフに、明るい色彩とシンプルなタッチで温かみと幸福感のある絵を描いた。カナダで愛された画家の一人である。

ほとんどの絵のサイズは小さく 20cm×25cmである。41cm×51cmの絵が3枚だけ確認されている。
茶ツボ、ティーポット、ちり取り、クッキーシート、薪ストーブなど家庭内のほとんどの物品、扉、雨戸、外壁、壁紙。家のあらゆるものがモードのキャンパスだった。家全体(内部の物品を含めた)がモードの作品である。

モチーフは自分の住む田舎の風景、動物、草花、蝶など。
絵画手法は、先ず輪郭を描き、絵の具のチューブから直接キャンパスに描いた。色を混ぜることは無かった。原色が多く使われるが、バランスの良い配色がされている。遠近法が用いられることはあるが、影は描かれない。素朴で明晰な画面。動物はユーモラスに描かれる。
美術の専門家の高い評価を受けることが少ない絵画である。それでも、モードの絵は見る人にとって明るく楽しい絵であり、それはモードが描く事に対して感じた楽しさと喜びが漏れ伝わる故であろう。

モード・ルイス - Wikipediaより引用


モードの抱えていたのはリウマチという病です。


関節リウマチの影響を示した図

関節リウマチ(かんせつリウマチ、rheumatoid arthritis:RA)
自己の免疫が主に手足の関節を侵し、これにより関節痛、関節の変形が生じる代表的な膠原病の1つで、炎症性自己免疫疾患である。
四肢のみならず、脊椎、血管、心臓、肺、皮膚、筋肉といった全身臓器にも病変が及ぶこともある。

発症のメカニズムは未解明であるが、生活習慣と遺伝的要因や感染症などによる免疫系の働きが関与していることを示唆する研究が多くある。
喫煙が関節リウマチと関連していることが予測されている。(シトルリン酸と喫煙の遺伝学的データの報告)

関節リウマチ - Wikipediaより引用



先日行われたアカデミー賞授賞式。
シェイプ・オブ・ウォーターが4冠ということで、主演女優賞ノミネートのサリー・ホーキンスの演技が光る。

そんな彼女が演じたモード・ルイス。
こちらは「シェイプ・オブ・ウォーター」とはまた違った障害を持つ女性なのですが、その自然体の演技と表情、細かな所作のひとつに至るまで全てが素晴らしい。


また、モードの夫エベレット役にイーサン・ホーク
彼もまたいい空気感を出すんですよ。

不器用でツンデレな漁師(笑)
そして、プライドと本音に葛藤しながらも少しずつモードに惹かれ、大切に想う優しさを見せる。



総評

窓から見える景色。静かに移り変わる季節。
そんな情景を切り取るように部屋や紙に描かれる色鮮やかな草花や動物たち。
その絵を見る人に命の尊さとその輝きを、そして絵を描くことの楽しさを伝える。




自分の居場所を求めるモードと、自分の居場所に閉じ込もるエベレット。
時にはぶつかり合い、葛藤しながらも次第に同調していく。
互いが互いを刺激するように、二人も時の流れとともに変化していく。

まるで真っ白なキャンパスから絵を描きあげていくように、モードとエベレットの二人の関係も少しずつ、しかし確実に夫婦の形となっていく。



この作品はモードだけでも、エベレットだけでも成り立たない。
あくまでも"夫婦"の愛を描いた作品だ。
よって、どちらのキャラクターにも偏ることない演出、二人のバランスが重要となってくる。

その点においても、サリーとイーサンの二人の演技は完璧と言えますね。
自然体であり、絶妙な空気感を持つ二人だからこそなのですが。


派手な描写や目に見える大きな変化はない。
どちらかと言えば退屈でごく平凡な日常が映る。

しかし、この状況と心理描写の変遷の繊細さが、心を響かせ優しく包み込む。



なんていい映画なんだ。

そう思わせる魅力が詰まっています。
そう、これは「パターソン」を観終わった後の感情に近しい。



終わりに

Wikipediaによると、エベレットはモードが亡くなった後、晩年絵を描いていたそうですね。

邦題の「しあわせの絵の具」
色どり豊かな絵の具は二人の人生を彩った夫婦を繋ぐ絆なのかもしれません。

どのシーンを切り取っても好きという感情を抱いてしまう。
こんな愛おしい一作に出会えて幸せです。



最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。




(C)2016 Small Shack Productions Inc. / Painted House Films Inc. / Parallel Films (Maudie) Ltd.