小羊の悲鳴は止まない

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雌雄を決する三位一体バトルミステリー(「劇場版名探偵コナン 紺青の拳」ネタバレ感想)

目次




初めに

こんにちは、レクと申します。
今回は「名探偵コナン 紺青の拳」について語りたいと思います。

映画「紺青の拳」の事件の核心(犯人や手口等)には触れていませんが、物語に関するネタバレ、名探偵コナンの原作コミックス、及び前作までの劇場版名探偵コナンのネタバレは含みます。

未読、未鑑賞の方はご注意ください。



作品概要


製作年:2019年
製作国:日本
配給:東宝
上映時間:110分


解説

大ヒットアニメシリーズ「名探偵コナン」の劇場版23作目。劇場版シリーズでは初めての海外となるシンガポールを舞台に、伝説の宝石をめぐる謎と事件が巻き起こる。コナン宿命のライバルでもある「月下の奇術師」こと怪盗キッドと、これが劇場版初登場となる空手家・京極真が物語のキーパーソンとなる。19世紀末に海賊船とともにシンガポールの海底に沈んだとされるブルーサファイア「紺青の拳」を、現地の富豪が回収しようとした矢先、マリーナベイ・サンズで殺人事件が発生。その現場には、怪盗キッドの血塗られた予告状が残されていた。同じころ、シンガポールで開催される空手トーナメントを観戦するため、毛利蘭と鈴木園子が現地を訪れていた。パスポートをもっていないコナンは日本で留守番のはずだったが、彼を利用しようとするキッドの手により強制的にシンガポールに連れてこられてしまう。キッドは、ある邸宅の地下倉庫にブルーサファイアが眠っているという情報をつかむが……。
名探偵コナン 紺青の拳(フィスト) : 作品情報 - 映画.comより引用

予告編



蹴撃の貴公子

400戦無敗"蹴撃の貴公子"と称される杯戸高校空手部主将、京極真。


原作初登場は「園子のアブない夏物語」
ある事件で犯人に狙われた園子を助けたことから二人の関係が始まります。

「バレンタインの真実」では発射されたライフルの弾丸を避けるという人間離れした身体能力も披露します。
他にも「園子の赤いハンカチ」で園子のピンチに駆けつけるなど、園子にとってヒーロー的存在でもあるんですよ。
真面目が故に園子の露出の多い服装を注意したり、一途が故に連勝記録を止めてでも何日も園子を待っていたり、天然な所も。


「容疑者か京極真」では園子と蘭のクラスメートで截拳道の使い手の世良真純と初対面します。

怪盗キッドvs.京極真」では園子の思惑、そして嫉妬させようと園子の心を盗んだと茶化す怪盗キッドに敵意剥き出しの京極真が描かれます。
鈴木財閥の相談役、鈴木次郎吉が京極真のことを"世界最強の防犯システム"と称しました。

京極真と怪盗キッドがライバル関係になったのはこの回からなんです。



怪盗1412号

怪盗キッドとは、名探偵コナンの原作者である青山剛昌先生が描く作品「まじっく快斗」の主人公。


天才マジシャンであった亡き父、黒羽盗一の死の真相を突き止めるべく、父の後を引き継ぎキッドという怪盗で世間を騒がしています。
彼の目的は父の死の真相と関わりのあるビッグジュエルを探し出し、真実を解き明かすことなんです。
怪盗と呼ばれていますが、所謂義賊。
盗んだものは元の持ち主に返還しています。


正式名称は怪盗1412号。
書きなぐりの"1412"が"KID"に見えたことから怪盗キッドと呼ばれるようになりました。

原作怪盗キッドの驚異空中歩行」では、鈴木財閥が所有するビッグジュエル"大海の奇跡"を狙って怪盗キッドとコナンが初対面します。
その時、園子がキッドに攫われて京極真が助けに来てくれるという妄想を蘭に話しており、怪盗キッドvs.京極真」で実現することに。

また怪盗キッドの瞬間移動魔術」でも鈴木財閥が所有する"紫紅の爪"を使ってキッドへの挑戦状を叩きつける。

怪盗キッドvs.最強金庫」ではキッドからの予告で鈴木財閥が誇る難攻不落の金庫"鉄狸"を披露。
「闇に消えた麒麟の角」「コナンキッドの竜馬お宝攻防戦」「コナンvs.キッド 赤面の人魚」でキッドとコナンは何度も対峙しています。

鈴木次郎吉がコナンのことを"キッドキラー"と呼ぶ所以がここにあります。



今作「紺青の拳」では協力関係にあるコナンとキッドも探偵と怪盗という本来は追う側追われる側の立場。
コナンの好敵手である怪盗キッドの好敵手が京極真という絶妙な三角関係。
というか、怪盗キッドに敵が多いだけなんですが。



今回もキザなセリフを残していきました。

『中身を言い当ててくれよ名探偵。殺人という名の謎めいた拳の中身をな。』



本作を観る前に

ここで、本作を観る前に原作もしくはアニメの「名探偵コナン」で書かれた事件「容疑者か京極真」怪盗キッドvs.京極真」を読んでおくことをオススメします。
京極真が如何に真面目で如何に強いのかが分かります(笑)


ただ本編で怪盗キッドvs.京極真」の映像が少し挿入される程度なので、今作『紺青の拳』単品でも十分楽しめる仕上がりになっています。
無理に観る必要は特に問題はありません。

前作『ゼロの執行人』同様に予備知識さえあれば単品で楽しめる仕様となっており、登場人物と人物相関図さえ頭に入れておけば問題はありません。


さて、前回の記事『ゼロの執行人』でも、Twitterでも何度も語っている自論"名探偵コナン"とは何たるか。が本作には詰め込まれています。



改めて語りましょう。


原作「名探偵コナン」では新一と蘭、平次と和葉、園子と京極、小五郎と妃、高木と佐藤…など様々なラブコメが描かれています(青山剛昌先生がラブコメ大好き)。

極論ですが、自分は「名探偵コナン」はラブコメありき、寧ろラブコメのない「名探偵コナン」は「名探偵コナン」ではないと思ってます。

‪APTX4869という黒の組織が開発した新種の薬を投与され、幼児化してしまった工藤新一。‬
江戸川コナンとして事件解決していく中で、新一がコナンとして過ごすという現状は新一と蘭のラブコメは平行線のままということ。
しかし、原作や映画でも何度か新一の姿に戻ったり、声だけでも蘭の傍に寄り添う。

‪ミステリー漫画として売り出している以上、本筋は黒ずくめの組織との対峙、殺人事件の推理がメインなのは仕方ないのですが…時が止まったように、本来は進展しないはずのラブコメが徐々に進展していく様、お互いの気持ちを素直に言えないもどかしさや物理的な障害が最大の魅力だと思っています。



今作ではシンガポールを舞台に鈴木園子と京極真、この二人のラブコメを中心‬に怪盗キッドの好敵手・京極真との三角関係、そして毛利蘭と工藤新一と怪盗キッドの三角関係も絡ませつつ非常に上手い人物相関図を描いています。


また、従来追うはずの立場である探偵・江戸川コナン怪盗キッドに協力するという、言わば"容疑者か怪盗キッド"という構図も見所。


今作は京極真が劇場版初登場なので劇場版の過去作を鑑賞する必要はないのですが、過去作でのキッド出演作もチェックしておくとより今作を楽しめます。

「世紀末の魔術師」

「銀翼の奇術師」

「探偵たちの鎮魂歌」

天空の難破船

「業火の向日葵」




ネタバレ感想

ここからネタバレ感想になるので未鑑賞の方はご注意ください。










さて、上記で鈴木園子と京極真のラブコメと記述しましたが、今回で園子への想いがしっかりと分かる描写がありましたね。

特に、京極真の額に貼られた絆創膏の秘密が。
園子とのプリクラを肌身離さず持ってるだなんて乙女かよと(笑)
400戦無敗の最強の男にこんなことされたら、そりゃあもうギャップに萌えますね!


ギャップと言えば、園子の髪型。
普段はカチューシャなどで前髪を上げたヘアースタイルをしていますが、今回初めて前髪を下ろす園子が拝めます。
端的に可愛すぎます。



と、基本的には園子と京極の恋愛が中心なのですが、結局のところ最後は工藤新一と毛利蘭のラブコメで締まりました。

メインはあくまでも園子と京極ですが、新一と蘭のラブコメは水面下でしっかりと描かれていたんです。
これは自分が今作こそ「名探偵コナン」だと賞賛する一因でもあります。
正直、前作での不完全燃焼から一転、ここまでのラブコメを見せられては、原作ファンとしても非常に嬉しい。


「ホームズの黙示録」でロンドンにて遠回しな告白をした新一、「紅の修学旅行」で蘭が答えを出した。
原作でも正式に付き合ったことになるのですが、キッドはこのことを知らなかったんですよね。


ラストで蘭は新一がキッドの変装だと見破っていました。
『二回も新一に変装して!』の台詞。
これは過去作天空の難破船のことです。
蘭は新一がキッドの変装だと見破ったのも、新一がしないようなことをキッドがしたから。
今回のきっかけは父である毛利小五郎のことを『おっちゃん』と呼んだから。

これ、めちゃくちゃ些細な日常の一片であって、二人の仲だからこそ気付けることなんですよね。
コナン自体も気付かなかったほどに。


それまでの新一と蘭のツーショットや言動、全てをしっかりと観察した上で確信したからこそのあのラストなのです。

蘭がどれだけ新一のことを考えているのか、どれだけ新一のことが好きなのか。が分かる素晴らしい描写なんです。

これ、コナン(新一)からすればめちゃくちゃ嬉しくないですか!?
自分なら嬉しい。。。

怪盗キッドvs.京極真」でも、園子に変装したキッドを京極真が見破ります。
京極が見破った理由はアレでしたが(笑)



キッドが間に入り、愛の再確認が出来る。
それを可視化する演出が最高of最高なんですよ!!!


もう一度言います。
今作はラブコメがしっかりと盛り込まれた"これぞ名探偵コナン"だと思います。



怪盗キッド出演作の劇場版名探偵コナンはミステリーというよりもアクションに重きが置かれ、いつもの名探偵コナン以上に視覚的に楽しめると思います。

欲を言えば、怪盗キッドと京極真の直接対決をもっと見たかった気もしますが、敵対する関係が協力関係になるという構図は好みでしたね。



今作の監督を務められた永岡智佳さん。
劇場版名探偵コナン初の女性監督ということもあって、ラブコメ要素に関して申し分無し。
また、キャラクタームービーとしても最高で、怪盗キッド、京極真のファンにとっては最高でしょう。



終わりに

コナン(新一)とキッドは今までにも貸し借りのある仲で、利害の一致で今回も協力関係にあったわけですが、新一と蘭の間を良い感じで怪盗キッドが取り巻いてくれました(笑)

現在の最新巻96巻でも別の事件ですが怪盗キッドと京極真が登場しています。
また前作「ゼロの執行人」のメインキャラクター、安室透も登場し、各々の登場人物が文字通り一本に繋がる展開に…!

同時に新一と蘭、平次と和葉、警視庁の千葉と三池など恋愛要素も徐々に進展。

96巻にして依然として飽きることなく、更に楽しみにさせてくれる「名探偵コナン」を今後も応援していきます!



そして、「紺青の拳」のエンドクレジットで恒例の次回作の触り映像が流れましたね!

次回作はどうやら赤井秀一についての映画のようです。
原作の黒ずくめの組織とのエピソードを準えつつ、前作「ゼロの執行人」の続編的な作品になりそうです。

2020年も劇場版名探偵コナンが楽しみです!



最後までお読みくださった方、ありがとうございました。




(C)2019 青山剛昌名探偵コナン製作委員会