小羊の悲鳴は止まない

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「神と共に 第一章:罪と罰」ネタバレあり感想

目次




初めに

こんばんは、レクと申します。
今回は韓国映画「神と共に 第一章 罪と罰」について語っています。

一言で言うと
泣いたし、めちゃくちゃ面白かった!!!

まだ間に合います。
二部構成なので、興味ある方は今のうちに劇場へGOしちゃってください!



この記事にネタバレを含みます。
未観賞の方はご注意ください。



作品概要


原題:Along with the Gods: The Two Worlds
製作年:2018年
製作国:韓国
配給:ツイン
上映時間:140分
映倫区分:G


解説

韓国の人気ウェブコミックを実写映画化し、世界的ヒットを記録したファンタジーアクション2部作の第1章。人間は死ぬと49日間に7つの地獄の裁判を受けなければならず、すべてを無罪で通った者だけが現世に生まれ変わることができる。ある日、死を迎えた消防士ジャホンの前に、冥界からの使者で地獄の裁判の弁護と護衛を務めるヘウォンメクとドクチュン、カンニムが現れる。生前の善行が認められ、19年ぶりの貴人として転生を確実視されるジャホンだったが、裁判が進むにつれて地獄鬼や怨霊が出現し、冥界が揺らぎはじめる。冥界の使者カンニムを「お嬢さん」のハ・ジョンウ、ヘウォンメクを「アシュラ」のチュ・ジフンが演じるほか、共演にも「猟奇的な彼女」のチャ・テヒョン、「新しき世界」のイ・ジョンジェら豪華キャストが集結。「ミスターGO!」のキム・ヨンファ監督がメガホンを取る。
神と共に 第一章 罪と罰 : 作品情報 - 映画.comより引用

予告編



罪と罰

タイトル『神と共に 第一章 罪と罰』からも分かる通り、二部構成という形を取りながらひとつの映画としてしっかりとカタルシスを設け、その上で後編に繋げるというエンタメのお手本です。

また、韓国映画のイメージは例えば猟奇殺人もの、自国の政界的な汚点を描いた社会派ドラマやヒューマンドラマ、ラブロマンスなどをイメージしますが、今作のジャンルはファンタジーアクション。
これが韓国でも大ヒットを巻き起こしたんです。


正直、あまり期待はせずに観たのですが、予想を超えるスケール感に圧倒されました。

『新 感染 ファイナル・エクスプレス』など、昨今の韓国映画の新境地開拓は良い方向に向いてますね。


では、本題に入っていきます。
タイトルにもある『罪と罰』。

罪と罰といえば、ドストエフスキーの『罪と罰』を思い浮かべる。

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)


主人公のラスコーリニコフは"1つの罪は100の善行によって償われる"という理論のもと、過去に火事の中から子供を救ったこともある青年。
しかし、殺人を犯してしまって罪の意識に苛まれる。

この作品は、"罪を犯した人間でも更生することができる"といった希望を見せるメッセージを含意しています。



今作での『罪と罰』は単純に地獄の法廷劇を意味します(笑)
厳密に言えばジャホンがラスコーリニコフと重なる部分はあるのですが、深く考察するまでもないでしょう。

生前の罪を背負い、死後に罰を受ける。
但し、生前に許された罪は死後に処罰されないといった例外はあります。

主人公の消防士ジャホンは生前の善行が認められた"貴人"。
貴人とは、一般的に身分の高い人のことを指す言葉ですが、ここで言う身分は冥界での扱いですね。



人は死を迎えるとどうなるのか?
この世(下界)とあの世(冥界)の世界はあるのか?
今作はそんな死生観を仏教の概念とVFXを用いて壮大なスケールで描いた超大作と言えます。



量子力学の観点から見た死生観は、脳(物質)の次に意識が作られるのではなく、意識から脳(物質)が作られる。
つまり、肉体(物質)が死んでも意識まで消滅する必要はなく、死後(意識)の世界が認められると仮定される。
即ち、死後の世界とは意識の世界ということになる。


冒頭でいきなり人生のクライマックスを迎えた消防士ジャホンが亡くなるシーン。
現場で倒れている自分を見ていましたが、これは量子力学の世界でいう意識。
言わば臨死体験のようなものと考えられます。

‪一旦、肉体の機能が停止した後、奇跡的に息を吹き返した人間がその間に体験する時間。
‪ある臨死体験に基づいた記録によると、死の直後3分間は意識があるとのこと。‬

使者が現れ、下界と冥界を繋ぐ穴に吸い込まれる間は霊体(意識)として下界に存在していたことになる。


ジャホンの弟スホンは、死後に怨恨によって下界に留まる。
これは所謂地縛霊のようなものだと考えられます。

身内が死後に怨恨で下界に介入すると冥界に地獄鬼が現れ時間の流れも早くなるという特殊な設定と、使者は下界に介入できないとしながら下界に介入した際に冥界に影響があったことから、基本的に亡者は下界に介入することは冥界の法律違反とされているようですね。

ただ一つ、下界に介入出来るものが現夢と呼ばれるもの。
亡者が下界の誰かひとりの夢の中に一度だけ姿を表すことができる。
所謂夢枕に立つというやつです。

夢枕に立つことは、何かを伝えるために霊が下界に現れたと考えて良いので、もし枕元に先祖の霊が現れて何も言わずに突っ立ったままだったら、ご用件を訊ねましょう(笑)



死後の世界を描いた映画は結構多いですよね。
例えば、最近日本でも公開された『DESTINY 鎌倉ものがたり』もそうです。


今作で描かれる死後の世界(冥界)は、端的にやりすぎです(笑)

まあ、そこが面白いんですが。
大枠はあらすじ通り法廷劇で小難しい話は一切なく、亡者ジャホンの生前の罪を問われ罰を与えるか否かという裁判がヒューマンドラマの形で描かれていきます。
家族を絡めてトラブルが発生する七つの裁判、そして兎に角、使者のアクションが凄い。

これはドラゴンボールか?
いや、『ジャンパー』だ!(笑)


とはいえ、七つもの裁判をひとつの映画内で行うことは時間の枠的に厳しいものがあり、テンポは早め。
そこがかえって良かったとも思います。
多分、もっと時間を掛けていたら中弛るみしてました。



七つの裁判

韓国映画において、仏教の映画は珍しく、韓国で扱われる宗教はキリスト教が多いと思います。

仏教を扱った映画で思い付くのは『アシュラ』。


キリスト教を扱った映画は多数あるので、個人的に好きな映画を。

シークレット・サンシャイン


『哭声 コクソン』




さて、今作『神と共に 第一章 罪と罰』で扱われる輪廻転生を題材にした死生観、仏説寿生教について記述していきます。

あらすじから簡単に説明をすると

人は死ぬと、49日間に7つの地獄の裁判を受けなくてはならない。
殺人・怠惰・ウソ・不義・裏切り・暴力・天倫
七つの地獄の裁判を無罪で通ったものだけが、現世に生まれ変われる。

というもの。
劇中でジャホンが受けた裁判の順は以下の通り。

火蕩霊道にある変成大王が仕切る"殺人地獄"
三途の川にある初江大王が仕切る"怠惰地獄"
剣樹林にある泰山大王が仕切る"ウソ地獄"
寒氷峡谷にある五官大王が仕切る"不義地獄"
天地鏡にある宋帝大王が仕切る"裏切り地獄"
真空深穴にある秦広大王が仕切る"暴力地獄"
千古砂漠にある閻魔大王が仕切る"天倫地獄"



日本における仏教では六道が一般的ですね。

六道とは、仏教において、衆生がその業の結果として輪廻転生する6種の世界(あるいは境涯)のこと。

六道には下記の6つがある。
天道(てんどう、天上道天界道とも)
人間道(にんげんどう)
修羅道(しゅらどう、阿修羅道とも)
畜生道(ちくしょうどう)
餓鬼道(がきどう)
地獄道(じごくどう)
このうち、天道、人間道、修羅道を三善趣(三善道)といい、畜生道、餓鬼道、地獄道三悪趣三悪道)という。

六道 - Wikipediaより引用



また、中国における仏教(道教)にも似たような教えがあります。
それが十王です。

十王とは、道教や仏教で、地獄において亡者の審判を行う10尊の、いわゆる裁判官的な尊格である。数種の『十王経』類や、恵心僧都源信の『往生要集』に、その詳細が記されている。

人間を初めとするすべての衆生は、よほどの善人やよほどの悪人でない限り、没後に中陰と呼ばれる存在となり、初七日 - 七七日(四十九日)及び百か日、一周忌、三回忌には、順次十王の裁きを受けることとなる、という信仰である。

没して後、七日ごとにそれぞれ
秦広王(初七日)
初江王(十四日)
宋帝王(二十一日)
五官王(二十八日)
閻魔王(三十五日)
変成王(四十二日)
泰山王(四十九日)
の順番で一回ずつ審理を担当する。
七回の審理で決まらない場合は、追加の審理が三回
平等王(百ヶ日忌)
都市王(一周忌)
五道転輪王(三回忌)
となる。ただし、七回で決まらない場合でも六道のいずれかに行く事になっており、追加の審理は実質、救済処置である。
もしも地獄道・餓鬼道・畜生道三悪道に落ちていたとしても助け、修羅道・人道・天道に居たならば徳が積まれる仕組みとなっている。

十王 - Wikipediaより引用



基本的な設定はこちらがモチーフとなっているかと思います。
今作に登場する裁判を収める大王の名前も十王と一致します。

もしかしたら、続編『神と共に 第二章 因と縁』では追加の審理3つが出てくるのかもしれませんね!

ただし、今作では死後の世界は全て地獄であり、生まれ変わる先が六道ではなく地獄道か人間道ということでしょう。
劇中でもちゃんと説明がされているので、地獄のルールについては観ていただければ分かると思います。

十王の裁判の裁きは特に閻魔王の宮殿にある「浄玻璃鏡」に映し出される「生前の善悪」を証拠に推し進められるが、ほかに「この世に残された遺族による追善供養における態度」も「証拠品」とされるという。
十王 - Wikipediaより引用


このように、裁判中に使者が弁論をする際に生前の証拠として見せていた鏡のことも明記されていました。



総評

と、ここまで冥界と七つの裁判について語ってきましたが、ここで総評です。

冒頭でも申した通り
泣いたし、めちゃくちゃ面白かった!!!

確かに冥界の世界観はワクワクします。
しかし、法廷劇が面白いわけではないんです。
なんなら雑なくらいです(笑)

そう、この作品のキモは裁判でも地獄でもなく、それらはすべてが消防士として生前に善行を積んだ主人公ジャホンとその弟スホンを絡めた家族の愛を掘り起こす媒体に過ぎないのです。

スホンは兵役中に一等兵のウォン・ドンヨンの誤射によって倒れる。
死を隠蔽したい上司がドンヨンと共にスホンを森に埋めた際、まだかろうじて生きていたスホンは生きたまま埋めになって殺される。

ジャホンの物語から突如スホンの物語へと移行し、その2つの物語を絡めて最終裁判である"天倫地獄"を迎える。

ファンタジーアクションと謳いながら、ミステリー要素までぶっ込んできたぞ!!!
と評価上がっちゃう。


"天倫地獄"で明らかになったジャホンの生前の罪。
兄弟喧嘩。
15年もの間、実家に帰らなかった理由。

卑怯だよね。ベタだよね。
泣かせようとする演出では普段泣かないんですが、泣いた。
何に泣いたかって、お母さんの我が子を思う気持ちですよ。
親の心子知らずとはよく言ったもので、もうこういうのに滅法弱い。

罪を許され無事ジャホンは生まれ変わることができました。

ハッピーエンド。





で終わりではなく、ジャホンはまだ48人目なんですよね。
そう、49人を生まれ変わらせることで、やっと使者たちは生まれ変わることができるんです。

49人目は最後の功績が認められ(?)貴人となったスホン。
そして、続編となる『神と共に 第二章 因と縁』はついにマ・ドンソクが登場します。


第一章はジャホンの物語。


第二章はカンニムたち使者の物語ということで、非常に楽しみです!



終わりに

ということで(?)
観客を楽しませることに注力した複合型エンターテインメントといったところでしょうか。
まんまとその魅力にハマってしまった。

元々、韓国映画は大好物だったのですが、新たな韓国映画の魅力を知れて「こういうのもアリだな」といった印象。
今後の楽しみが増えましたね。



最後までお読みいただいた方、ありがとうございました!



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