宗教や信仰概念を揺るがすフェイク・ドキュメンタリー(映画「オカルト」ネタバレ)
目次
初めに
こんばんは、レクと申します。
今回はTwitterのフォロワーさんからのオススメ
白石晃士監督の「オカルト」について少し語っていこうかと。
経緯の詳細は忘れましたが、自分がフェイク・ドキュメンタリーやPOVが好きだという話の流れからだったと思います(笑)
ホラー映画も好きだということもあるのかなあ?
この記事はネタバレ含みますので、未鑑賞の方はご注意ください。
作品概要
製作年:2008年
製作国:日本
配給:イメージリングス
上映時間:110分
あらすじ
「ノロイ」「口裂け女」などで知られるホラーの鬼才・白石晃士が、オカルト・ドキュメンタリー番組を製作する人々のスリルや恐怖を描いた意欲作。「アカルイミライ」「トウキョウソナタ」の黒沢清監督や漫画家の渡辺ペコなどが特別出演している。3年前にとある観光地で起きた通り魔殺人事件に興味を持った映画監督の白石は、事件の唯一の生存者で現在はネットカフェ難民の青年・江野に取材を敢行する。
オカルト : 作品情報 - 映画.comより引用
予告編
白石晃士監督作品
まず、「オカルト」を観終わって一言。
「そう来たか。」
白石晃士監督には申し訳ないんですが、彼の作品は片手で数えられるほどしか観たことがないんですよね。
ひとつは「貞子vs伽椰子」
メジャータイトルであり、リングと呪怨が好きな自分向けではある作品です。
「ミュージアム 序章」
こちらもミュージアムというメジャータイトルがきっかけです。
つまり、純粋に白石晃士監督の作品が観たいと思って観たのはこの作品が初ではないかと。
「ある優しき殺人者の記録」
そして「不能犯」
絶賛公開中ではありますが、感想はまだ書いてません(笑)
観ている作品が少ないために、監督の嗜好や傾向と判断材料が無いながらにも、感想を纏めました。
白石晃士監督初心者として暖かい目で見てやってください。
オカルトとは
タイトルにもなるオカルトとは?
オカルト(英語: occult)
秘学・神秘(的なこと)・超自然的なもの。
目で見たり、触れて感じたりすることのできないことを意味する。
Wikipediaより引用
一般的にイメージするところのオカルトと同じでしょう。
この作品「オカルト」でも、事件の裏側に潜む超常現象と謎の声、オカルティズムが描かれています。
そのオカルト現象をチープだが奇跡と見せること、そしてそれらをモキュメンタリーとして信じ込ませる演出が光る。
またその奇跡を目の当たりにする江野くんを演じる宇野祥平さんが、ダメ男なのにどこか憎めない、独特の雰囲気を醸し出してるんですよね(笑)
早速、確信に触れますが
超常現象や謎の声とは何だったのか?を掘り下げていきましょう。
まず、冒頭で起きた通り魔事件。
二人の女性が殺害され、一人の男性が重傷を負い、犯人は崖から飛び降りるも死体は見つからなかった。
その事件の被害者であり生存者でもある江野くん。
うんこみたいな人生を送ってきた彼が、その事件の後から起こる様々な超常現象により、自分は特別な使命を課されたと感じるようになるんです。
そして、その事件より刻まれた背中の傷。
それとよく似たアザが通り魔事件の犯人にもあったことが分かった。
通り魔事件の犯人(松木)
この象形文字のようなものが御昼山の九頭呂岩で見つかる。
見つかった岩の左側(松木のアザ)は神託と殺人。
右側(江野の傷)は神託と災害(人災も含む)。
ここで松木が神の啓示により殺人を犯したように、江野も神の啓示により何か罪を犯すのではないか?と白石は推測する。
言わば、超常現象や謎の声は神の存在を示すものとして描かれているわけですね。
さて、ここでいう神とは何なのだろうか?
特別出演の黒沢清監督の話に出てきましたね。
天瓊を以て滄海を探るの図(小林永濯・画、明治時代)
右がイザナギ、左がイザナミ。二人は天の橋に立っており、矛で混沌をかき混ぜて島(日本)を作っているところ
ヒルコ(水蛭子、蛭子神、蛭子命)
日本神話に登場する神。蛭児とも。『古事記』において国産みの際、イザナギ(伊耶那岐命)とイザナミ(伊耶那美命)との間に生まれた最初の神。しかし、子作りの際に女神であるイザナミから先に男神のイザナギに声をかけた事が原因で不具の子に生まれたため、葦の舟に入れられオノゴロ島から流されてしまう。
後世の解釈では、水蛭子とあることから水蛭のように手足が異形であったのではないかという推測を生んだ。あるいは、胞状奇胎と呼ばれる形を成さない胎児のことではないかとする医学者もある。Wikipediaより引用
日本神話におけるイザナギとイザナミの国産みの際に生まれた最初の子ヒルコ。
ここで思い出してほしいのが、白石の左足と岩の名前です。
白石の足に九匹の蛭が噛み付いていたこと。
そして岩の名前は九頭呂岩。
一見、九にのみ着目してしまうところですが
「御昼山」=「日本神話」
「九頭呂岩」=「クトゥルフ神話」
を繋げるものではないだろうか。
白石晃士監督はクトゥルフ神話が好きだというお話も前情報として得ていました。
その辺りを交え、神の正体について考えていきます。
日本神話とクトゥルフ神話
同じ神話でも日本神話とクトゥルフ神話はまるで別のものです。
しかし、ここで関係が全くないとも言いきれないんですよ。
クトゥルフ神話でこの作品のヒルコにより近い神が存在します。
アブホース(英:Abhoth)
クトゥルフ神話に登場する架空の神性。外なる神。地底の空洞にわだかまる巨大な灰色の水溜まりのような姿をしており、その中からは絶え間なく灰色の塊が形成され、それが這いずりながら親から離れていこうとする。アブホースから延びている無数の触手は、そういった自らの落とし子をつかんで貪り食う行為を絶え間なく続けている。
アブホースは知性を持っており、テレパシーで会話が出来るが、 地上や人間に関しては疎く、興味も持っていないようである。Wikipediaより引用
・這いずりながら親から離れていこうとする
→まるで捨てられたヒルコのようでもある。
・アブホースから延びている無数の触手
→九匹の蛭もその触手?
・知性を持っており、テレパシーで会話が出来る
→謎の声の正体?
・自らの落とし子をつかんで貪り食う行為を絶え間なく続けている
→人間を誑かし、貪る。
こじつけかもしれませんが、作中に語られた日本神話のヒルコとクトゥルフ神話のアブホースは同一と考えられるのではないでしょうか?
総評
ネカフェ難民を捉えた社会派モキュメンタリーとしての作品の完成度は高い。
悪魔は時として天使の姿で現れ、人を騙すとも言います。
まさにこの作品がそれ。
上記で超常現象や謎の声は神の存在を示すものと記述しました。
奇跡と信じるその現象も神の啓示も全ては餌だったわけです。
神の啓示から地獄行きの流れは宗教や信仰概念を揺るがし、穏やかに狂気の渦へと引き込まれ、じわじわと後から感じる恐怖と絶望感を体験する。
異常な人間は、自分の異常さに気付かないもの。
信じたその奇跡もまた神の啓示として疑わないのだ。
ラストのうんこみたいな終わり方はリアルをフェイク、ノンフィクションをフィクションだと分からせる目覚めの薬、眠眠打破になってますね(笑)
終わりに
久しぶりの旧作記事になりましたが、この作品は観る人を選ぶ作品であることは間違いない。
自分はある程度何でも観れちゃう派なので楽しめましたが、興味のある方は是非。
自分は白石晃士監督の他の作品に興味がわいてきたので、少しずつ鑑賞していきますね(笑)
最後までお読みくださった方、ありがとうございました。