小羊の悲鳴は止まない

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揺れる渋谷と愛のバクダン(『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』ネタバレ感想)

目次




初めに

どうもレクです。
今回は『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』について語っています。

映画『ハロウィンの花嫁』の事件の概要及び物語に関するネタバレ、名探偵コナンの原作コミックス、及び前作までの劇場版名探偵コナンのネタバレは含みます。

未読、未鑑賞の方はご注意ください。



作品概要


製作年︰2022年
製作国︰日本
配給︰東宝
上映時間︰110分
映倫区分︰G



解説

青山剛昌原作の大ヒットシリーズ「名探偵コナン」の劇場版25作目。ハロウィンシーズンの東京・渋谷。コナンたち招待客に見守られながら、警視庁の佐藤刑事と高木刑事の結婚式が執り行われていたが、そこに暴漢が乱入。佐藤を守ろうとした高木がケガを負ってしまう。高木は無事だったが、佐藤には、3年前の連続爆破事件で思いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えた。一方、同じころ、その連続爆破事件の犯人が脱獄。公安警察の降谷零(安室透)が、同期である松田を葬った因縁の相手でもある相手を追い詰める。しかし、そこへ突然現れた謎の人物によって首輪型の爆弾をつけられてしまう。爆弾解除のため安室と会ったコナンは、今は亡き警察学校時代の同期メンバー達と、正体不明の仮装爆弾犯「プラーミャ」との間で起こった過去の事件の話を聞くが……。降谷零と、すでに殉職している松田陣平、萩原研二、伊達航、諸伏景光の4人を含めた、通称「警察学校組」と呼ばれる5人がストーリーの鍵を握る。
名探偵コナン ハロウィンの花嫁 : 作品情報 - 映画.comより引用




本作を観る前に

前作に続き、劇場版名探偵コナンは原作コミックスの知識が前提の物語となっていることは否定できません。
とはいえ、何十年も続いている原作コミックやアニメの中で数話のエピソードしか出てきていない警察学校組の話は、ある意味で名探偵コナン初心者でも追える物語でもあります。

ただし、24作目『緋色の弾丸』同様、キャラクタームービーとして作られているのは変わらないので、多少の予備知識は必要ではあります。


ということで、僕なりに本作『ハロウィンの花嫁』を十二分に楽しむためのエピソードを纏めてみました。

原作及びアニメファンの方もどの話を復習すればいいのか?の目安になれば幸いです。





警視庁

・佐藤美和子
警視庁刑事部捜査第一課強行犯捜査三係の警部補

元捜査第一課強行犯捜査三係の警部、父の佐藤 正義は物語開始の18年前に逃走する犯人を追跡中にトラックにはねられ殉職。
この事件は「愁思郎事件」と呼ばれている。

4作目『瞳の中の暗殺者』で初登場。

3年前に爆弾事件で殉職した同僚、松田陣平(後述)に想いを寄せていたが同一犯によって起こった事件を解決後、高木渉と急接近して恋人同士へ。
この3年前の事件を描いたのが『揺れる警視庁 1200万人の人質』。
本作『ハロウィンの花嫁』を観る上ではマストの回と言えます。

この時、佐藤刑事は松田刑事の背後や高木刑事の背後に死神を見たと言っています。
これは本作『ハロウィンの花嫁』でも現れる。

伊達航が交通事故で死亡したことで自殺した彼女のナタリー。
その彼女と親しかった老人がナタリーは捨てられたと思い込み、敵討ちのため同じ名前である「わたる」から高木刑事がその相手だと勘違いして拘束した事件を佐藤刑事が解決している。



・高木渉
警視庁刑事部捜査第一課強行犯捜査三係の刑事を務める巡査部長

1年前までは3歳上の先輩.伊達航(後述)とコンビを組んでおり、一課内では2人の名前の読みが同じことから「ワタル・ブラザーズ」と呼ばれていた。
高木刑事が普段使っている黒い手帳は、伊達の遺品。

劇場版では原作初登場エピソード放送後の3作目『世紀末の魔術師』で初登場。
6作目『ベイカー街の亡霊』、19作目『業火の向日葵』、21作目『から紅の恋歌』、23作目『紺青の拳』以外、すべてに登場している。

『本庁の刑事恋物語』シリーズで2歳年上の佐藤美和子刑事との恋愛模様が描かれる。
また、「愁思郎事件」を解決している。



本庁の刑事恋物語 (漫画21巻 アニメ146~147話)
本庁の刑事恋物語2 (漫画23~24巻 アニメ156~157話)
本庁の刑事恋物語3 (漫画27巻 アニメ205~206話)
本庁の刑事恋物語4 (漫画32~33巻 アニメ253~254話)
本庁の刑事恋物語5 (漫画40巻 アニメ358~359話)
本庁の刑事恋物語6 (漫画44巻 アニメ390~391話)
本庁の刑事恋物語7 (漫画50巻 アニメ431~432話)
本庁の刑事恋物語 偽りのウェディング (漫画52巻 アニメ449話)
本庁の刑事恋物語8 左手の薬指 (漫画56巻 アニメ487話)
本庁の刑事恋物語(告白) (漫画82巻 アニメ748話)
本庁の刑事恋物語(真相) (漫画82巻 アニメ749話)

揺れる警視庁 1200万人の人質 (漫画36~37巻 アニメ304話)





警察学校組

・降谷零(安室透) 画像の右から2番目

人物については22作目『ゼロの執行人』に記載。

初登場回は漫画FILE793 「プライベートアイ」
アニメは「ウェディングイブ」でコナンと接触してくる。



・松田陣平 画像の左から2番目
警視庁警備部機動隊爆発物処理班員
警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係刑事

警備部機動隊爆発物処理班にいたが、7年前に親友の萩原研二が爆発処理中に殉職。
その後、自身も観覧車に仕掛けられた爆弾を解体中に殉職。
本来なら解体できたが、次の暗号を手に入れるために犠牲となる。
死ぬ直前、佐藤刑事にメールで告白する。


20作目『純黒の悪夢』では、降谷零(安室透)の警察学校時代の友人だったことが明かされました。

初登場回は漫画File 366 「丸見え埠頭の惨劇」
アニメでは「揺れる警視庁 1200万人の人質」がマスト。



・萩原研二 画像の右端
警視庁警備部機動隊爆発物処理班員

松田陣平とは同僚で親友。
7年前に発生した、ふたつの場所に爆弾が仕掛けられた爆弾事件で松田と萩原が解体を担当。
松田は成功させるも、萩原は間に合わず殉職。


初登場回は漫画File 1021「遺品」
アニメ「命を賭けた恋愛中継」



・伊達航 画像の真ん中
警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係刑事

老け顔だが歳は佐藤刑事のひとつ上。
高木刑事の教育係を務め、高木刑事は伊達を尊敬していた。
大切な手帳を落として拾おうとしたところ、居眠り運転の車に轢かれて死亡。

初登場回は漫画File 804「高木刑事からの贈り物」
アニメ「命を賭けた恋愛中継」



・諸伏景光 画像の左端
警視庁公安部警察官
黒の組織のメンバー(スコッチ)

長野県警の警部諸伏高明の実弟。
少年時代に両親を殺害され、東京の親戚に引き取られる。

公安時代、降谷零(安室透)と共に黒の組織へ潜入捜査を行う。
組織内では狙撃手として、同時期にFBIから潜入していた赤井と3人で共に行動していた。
後に正体が露見したことで赤井に追い詰められ、赤井秀一から奪った拳銃で胸ポケットに入った自身の携帯電話ごと心臓を撃ち抜き自殺。
降谷はこの一件に関する誤解が原因で赤井を憎んでいる。
コナンもまだこの事実を知らない。


初登場回は漫画File 937 「消された手がかり」
アニメ「仲の悪いガールズバンド」



原作コミック101巻(現時点で)の中にも登場しますが、基本的にはこの「警察学校編」の上下巻を読んでいれば本作の内容の補完にはなると思います。


ネタバレ感想

さてさて、本作『ハロウィンの花嫁』の重要なポイントを簡単に纏めてみます。


今回の事件は3年前の松田、萩原が殉職した爆破事件の犯人が脱獄したところから始まる。
それを追う安室透が犯人を追い詰めるも脱獄犯が爆死。
黒幕の手によって安室の首に爆弾が付けられた。

この黒幕が世界中で爆破テロ事件を起こしている爆弾魔(通称プラーミャ)らしく、どうやら3年前の松田刑事が殉職する前日、警察学校組が携わった事件(公安により事件は渋谷ガス爆発事故として処理されている)と大きく関わっているようで。


一方で、目暮警部の同期である村中努が脅迫状を受けながら、フランス人の恋人クリスティーヌ・リシャールと結婚することが決まり、警察は警護につく。
高木刑事と佐藤刑事が結婚か!?と思っていたら、警護の予行練習で、「あ、そういうことね」となりました(笑)

そして、警視庁前で外国人が爆死する事件が発生。
巻き込まれた灰原哀、それを庇った毛利小五郎が負傷。
おっちゃんはコナンに麻酔銃で眠らされ続けたことで麻酔に耐性がついてしまって、事故後の麻酔が効かずに痛がるところがハイライト(笑)


その爆死した外国人は、安室の首に爆弾を取り付けたプラーミャを追うロシアの民間組織「ナーダ・ウニチトージティ」の一員であることが判明。
爆弾魔の被害者家族で構成されたナーダ・ウニチトージティのトップがエレニカ・ラブレンチエワ(CV:白石麻衣)。
ロシア人の話す日本語ということで、カタコトの日本語と思えば吹き替えの下手さはあまり気にならず。


3年前、萩原の墓参りで集まった警察学校組の4人。
墓参りの後に起こった爆破事件で、降谷と松田が乗り込み、伊達と諸伏の助太刀もあったがプラーミャを逃してしまう。
降谷の助太刀に入った諸伏の銃弾によってプラーミャは右肩を負傷した。

松田が爆発を止めたという事実がナーダ・ウニチトージティの調べでわかり、千葉刑事を人質に松田の協力を願うが…松田刑事はその後に殉職しているので高木刑事が変装をすることに。
この高木刑事が変装すると松田刑事にそっくりだというのはテレビシリーズを観ているとわかるファンサービスにもなっていますね。

プラーミャは右肩を負傷していたことから、過去に村中努が右肩を負傷して通院していたことが明かされて犯人フラグが立ったんですが、実は真犯人は…という流れでした。





ミステリーとしては犯人に辿り着くための情報が少なくてアンフェアではあるが、トリックは拗らせたものでも力技でもなく勘で大凡の予想はついてしまう。
例えば、ゲストキャラが少ないことやあからさまなフラグを立てるところなど。

そういった点からも謎解きとしてではなく、あくまで『劇場版 名探偵コナン』として面白かったと思います。



前作である24作目『緋色の弾丸』のポストクレジットで次回作は警察学校組の話だと明かされ、キャラムービーとして観客の間口を更に狭めてしまうことになるのでは?と危惧していました。

というのも、これまでの『劇場版 名探偵コナン』は原作を知らなくても映画として楽しめるものとなってました。

しかし、『緋色の弾丸』は特異で、赤井一家のことを知らなければ物語についていけない間口の狭い物語となっていたこともあり、『緋色の不在証明』というTVスペシャルでいいだろという最悪なダイジェストの内容の映画が公開されました。

そういう意味でも、本作『ハロウィンの花嫁』は原作漫画やアニメを観ていなくても、これ一作で成り立っているので従来の『劇場版 名探偵コナン』になっていると言える。

それに加えて、高木刑事と佐藤刑事の関係性や警察学校組のことを踏まえた上で原作漫画やアニメを観ている人にとっても楽しめる物語となっていたのは流石。

物語の導線にキャラの説明を挟むことで、合理的にストーリーを展開していきます。
難しすぎない話なので、子どもたちにも少し優しめの設計になっていることは本作『ハロウィンの花嫁』のメリットだと思います。





過去の劇場版名探偵コナンの記事でも何度も語っている自論"名探偵コナン"とは何たるか。についてですが改めて語りましょう。

原作漫画『名探偵コナン』では新一と蘭、平次と和葉、園子と京極…など様々なラブコメが描かれています(青山剛昌先生がラブコメ大好き)。

極論ですが、自分は『名探偵コナン』はラブコメありき、寧ろラブコメのない『名探偵コナン』は『名探偵コナン』ではないと思ってます。

これ、毎回言ってるんですが
本作『ハロウィンの花嫁』はというと

ラブコメ最高っ!!!


そう考えると21作目『から紅の恋歌』はとんでもないラブコメだったなと改めて痛感しています。
平次と和葉の恋模様を主軸に描きながら、新一と蘭の恋愛模様を進展させる落とし所をつけた素晴らしさ。

直近だと23作目『紺青の拳』でも言えます。
映画としては怪盗キッドが出てくる物語なのでミステリーというよりはアクション過多、評価としても下がってしまうのですが、ラブコメという点においては素晴らしいんですよね。
園子と京極さんの恋模様にキッドという邪魔が入ることで熱が上がる。
そして、その二人とは別に新一と蘭の恋模様を描くことにも成功していました。


この『から紅の恋歌』と『紺青の拳』の脚本家・大倉崇裕さんが本作『ハロウィンの花嫁』を担当されていたことを後から知りました。
『劇場版 名探偵コナン』のラブコメにおいては、大倉崇裕さんの脚本が一番好きかもしれない。



本作『ハロウィンの花嫁』に新一と蘭のラブコメ要素が一切なかったのは不満点の一つではありますが、それ以上に高木刑事と佐藤刑事の色恋沙汰が見れたので良かったです。

特に松田刑事の殉職含め過去の話と絡ませることで、過去から今へ、現在から未来へと歩み進めることを描きやすくなるんですよね。
原作漫画やアニメで、松田刑事が殉職した事件を経て佐藤刑事は松田刑事から送られていた最後のメールを削除するシーンがあったと思います。

これは形として残すのではなく記憶の中にしまっておくことを表していて
高木渉「ダメですよ…忘れちゃ…それが大切な思い出なら、忘れちゃダメです… 人は死んだら、人の思い出の中でしか生きられないんですから」
この名言の体現でもあるんですよね。



また、降谷零(安室透)が警察学校組の言葉を受けて今があるといった描写も素敵で。
同期4人を亡くし、ただひとり残された降谷はしっかりと彼らと共に生き続けているんだと思わされる。

松田刑事の殉職は一先ず置いておいて、こういう過去の交際相手や好きになった人、大切な人のことが忘れられないという経験は誰にでもあると思うんです。


佐藤刑事は当然のこと、高木刑事もそう、村中さんもそう、ナーダ・ウニチトージティのメンバーもそう。

忘れられない経験を普遍的な恋愛や家族愛に落とし込み、尚且つ本作『ハロウィンの花嫁』は過去を忘れられないことを肯定しつつ前に踏み出す勇気をくれる映画でもあるんですよね。




終わりに

現時点では原作コミックスは101巻が発売されています。
前巻100巻ではRUMの正体が判明していよいよ佳境に差し掛かったところで話は少し停滞しましたが。
この警察学校組と関係のある方も登場しているので今後もまだ警察学校組と物語が絡むことはありそうですね。


そして、エンドロール後の次回作のヒントですが
黒ずくめの組織の彼の声が…。

5作目『天国へのカウントダウン』
13作目『漆黒の追跡者』
18作目『異次元の狙撃手』
20作目『純黒の悪夢』
22作目『ゼロの執行人』
24作目『緋色の弾丸』

黒ずくめの組織絡みの映画は過去に6作品あるので、7作品目になりそうですね。

劇場版は怪盗キッド登場の作品と黒ずくめの組織絡みの物語はあまり好みではないことが多いので不安もありますが、来年また観たあとでブログを書くことにします(笑)



最後までお読みくださった方、ありがとうございました。




(C)2022 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会