小羊の悲鳴は止まない

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世界が狂う(『ヴェノム︰レット・ゼア・ビー・カーネイジ』ネタバレ考慮)

目次




初めに

どうも、レクです。
今回は公開日初日にドルビーシネマで鑑賞してきました『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』について語っております。


※この記事はネタバレを含みますので、未鑑賞の方はご注意ください。



作品概要

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原題︰Venom: Let There Be Carnage
製作年︰2021年
製作国︰アメリカ
配給︰ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間︰98分
映倫区分︰G


解説

マーベルコミックのダークヒーロー、ヴェノムの活躍を描いたトム・ハーディ主演作「ヴェノム」の続編。圧倒的戦闘力と残虐性を持ち、ヴェノムの大敵となるカーネイジとの戦いを描く。「悪人以外を食べない」という条件でエディの体に寄生した地球外生命体シンビオートのヴェノムは、食欲制限を強いられ不満を抱えながらも、エディとの共同生活をそれなりに楽しんでいた。そんな中、ジャーナリストとして未解決事件の真相を追うエディは、刑務所で死刑囚クレタス・キャサディと再会する。クレタスは猟奇殺人を繰り返したシリアルキラーで、死刑執行が迫っていた。エディに対し異様な興味を示すクレタスは突如として彼の腕に噛み付き、その血液が人間とは異なることに気づく。そして死刑執行の時、クレタスはついにカーネイジへと覚醒する。主人公ヴェノム/エディ役をハーディ、エディの元恋人アン役をミシェル・ウィリアムズが続投で演じ、「スリー・ビルボード」のウッディ・ハレルソンがカーネイジ/クレタス役を演じる。そのほか新キャラクターのシュリーク役で、「007」シリーズのナオミ・ハリスが参加。「モーグリ ジャングルの伝説」など監督としても活躍する俳優アンディ・サーキスがメガホンをとった。
ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ : 作品情報 - 映画.comより引用





感想

正直ですね、前作『ヴェノム』はあまりノレテナイんですよ(笑)

前作『ヴェノム』の感想がこちら。

だからこそ、というわけでもありませんが、本作『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は期待しすぎず観に行きました。

まあまあ楽しかった!

純粋に鑑賞中は前作よりも楽しめました。


前作でのヴェノムがダークヒーローになる動機づけの曖昧さは、本作では2作目ということを考慮せずとも同じ特性を持つ新たな敵カーネイジが登場することでしっかりとカバーできている。
寄生と共生によるエディとヴェノムの関係性も良いし、掛け合いによるコミカルさも前作以上。

ただ、やはり映倫がGということで、ヴェノムの立ち位置が可愛さしかなく、グロさもないので、ヴィラン感は完全に消失。
ダークヒーローとしての地位を確立してしまっているのは個人的には物足りない点でもあります。


加えて、一番盛り上がるであろうヴェノムとカーネイジの最終バトルも物足りなさが半端ないですね。
エディとヴェノムの残虐の庇護者もそうですが、カーネイジは完全に名前負けしてます。

もっと人を食え!


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ダンの炎とフランシスの音の使い方も微妙。
大聖堂の鐘の方が良い仕事をしてくれてます(笑)
ヴェノムとカーネイジが同じ特性を持つということで、鐘の音によって生身の身体同士で戦う展開は面白いですが。

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また、フランシスの最期は鳴らない鐘によって齎される皮肉ときたもんだ。
その上、マリガン刑事の目の色がシュリークみたいに光るし。
ヴェノム3作目に向けての伏線ですよね、これ。

ということで、最終バトルには正直がっかりでした。




考察

では早速、考察に入りたいと思います。
本作『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は"繋がり"の物語だと感じました。

その3つの"繋がり"について語っておきます。



①共生と寄生

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残虐と大殺戮、共生と解放、傷心と愛。
エディとヴェノム、クレタスとカーネイジ、二組の対比を物語と上手く絡ませながら進行するので見易さもあります。

特にヴェノムとカーネイジの対比として、想い人への対応で顕著に現れています。
エディとアンの関係は前作からの"繋がり"もあり、ヴェノムとアンの関係も良好。
それはエディとヴェノムの関係性と深く結びついています。


一方で、クレタスとフランシスは両想いであるにも関わらず、カーネイジとフランシスの相性は最悪。
炎と音が弱点のシンビオートにとって、フランシスの能力でもある音波攻撃は邪魔でしかない。

クレタスとカーネイジはあくまでも利害の一致にすぎず、エディとヴェノムの関係性とは相反するものとして描かれています。


そんなクレタスとカーネイジの"繋がり"を通して、エディとヴェノムの"繋がり"を強調する。

二人がまるで恋仲のようにイチャついたり喧嘩別れする展開は面白かったですね。

それでも、前作でも描かれた適正が擬似的にも信頼関係を築き、本作ではそこから一歩先に進む互いの必要性を身を以てわからせ、彼らを引き離すことができない"繋がり"をバディ・ムービーとして魅せてくれました。



②血と痛み

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人は血と痛みから生まれる。
皮肉にもカーネイジもこの血と痛みから生まれてしまう。

カーネイジ本人もヴェノムを父と呼ぶように、本作のもう一つのテーマが"父殺し"。
これはクレタスの過去とも深く関わっており、フランシスとの結婚を急いだこともまた、彼なりの家族形成なのだろう。

"父殺し"に関しても、過去の悪しき"繋がり"を断つことで、新たな"繋がり"を結ぶことになる。


"父殺し"といえばギリシア悲劇『オイディプース王』の物語が浮かぶと思います。
オイディプースもまた、知らなかったとはいえ父を殺め、母と交わることで新たな"繋がり"を築いています。

そして、親という存在は子の最初に立ち塞がる障害でもあるんです。
『スター・ウォーズ』などでも描かれてきましたが、『オイディプース王』との違いは和解の有無。

当然、本作のヴェノムとカーネイジに関して和解などはなく、"父殺し"も未遂に終わり、エディとヴェノムの関係をより固いものとしました。


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エディとアン、ダンとアン、クレタスとフランシス、三者三様の愛の"繋がり"の比較も面白い。

また、本作ではアンとヴェノムの"繋がり"も脚本上に練りこまれていました。
とても良い!



③エンドクレジット

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ヴェノム2作を終えて、ついにピーター・パーカー登場。
これは『スパイダーマン︰ファー・フロム・ホーム』のラストです。
『スパイダーマン︰ノー・ウェイ・ホーム』及び『Doctor Strange in the Multiverse of Madness』の世界線へと召喚されたことになります。

ああ、ついに繋がってしまった!
ひとつのテーマでもある"繋がり"はシリーズを超えてここにまでの"繋がり"を持たせてしまったということですね。



終わりに

「荒ぶるヴェノム 弄ぶカーネイジ 世界が 狂う」
全然世界が狂わねえ!と思ってたら、マルチバース案件だったんだもの…世界は狂っちゃうね。


ということで本作『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を終えて、今後のMCU映画を観るために予習しなければならない映画が増えたことになります。
今からMCUを追いかける人は本当に大変だ!

さて、僕はいつMCUを卒業しようか…。



最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。



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