小羊の悲鳴は止まない

好きな映画を好きな時に好きなように語りたい。

つ・な・げ・て・み・た・い(「ムカデ人間2」ネタバレ考察)

目次




初めに

おはようございます、レクと申します。
清々しい朝が来ましたね!
そんな朝に相応しい映画の考察をお届けしたいと思います。


今更ながらですね、ついに『ムカデ人間2』の考察記事に着手しようかと思いまして。

というのもですね、ここ最近何故だかTwitterのTLで"ムカデ人間"という文字をよく見るんですよ。
何故でしょうねえ(笑)


というわけで、今回は前作の考察とは違って至って真面目に考察しております。
作品の内容が内容のため、不謹慎な発言、不適切な発言、その他諸々ございます。

それから、当然ながら前作『ムカデ人間』と今作『ムカデ人間2』のネタバレも含まれます。
未鑑賞の方はご注意ください。



作品概要


原題:The Human Centipede II (Full Sequence)
製作年:2010年
製作国:オランダ・イギリス合作
配給:トランスフォーマー
上映時間:91分
映倫区分:R18+


解説

狂気に満ちた医師が、複数の人間の口と肛門とをつなぎ合わせ“ムカデ人間”をつくろうとする姿を描いたカルトホラー「ムカデ人間」(2009)の続編。ロンドンの地下駐車場で夜間警備員として働く中年男のマーティンは、映画「ムカデ人間」のDVDを繰り返し見ては、自分も“ムカデ人間”をつくりたいという欲望にかきたてられる。マーティンは、駐車場で目をつけた男女を次々と拉致して倉庫に監禁。邪悪な計画を進めていく。過激で残酷な内容に世界各国で上映禁止になり、日本でも度重なる映倫審査の末、R18+指定での上映が決まった問題作。
ムカデ人間2 : 作品情報 - 映画.comより引用

予告編



『ムカデ人間』の存在意義

さてさて、皆さんお待ちかねの『ムカデ人間2』考察のお時間がやって参りました!

え?誰も待ってない?
そうなんですよ、これって完全なる自己満足の考察記事なんですよね!!!

というわけで、開き直って張り切って書いていきましょう!!!



『ムカデ人間』のふざけまくった考察記事をお読みでない方は、『ムカデ人間』の鑑賞を終えた後でこちらをお読みください。



まず初めに『ムカデ人間』の存在意義について語っていきます。



『ムカデ人間』の目的は単なる好奇心。













といった可愛らしい(笑)願望から始まるわけです。
そして、『ムカデ人間』の考察にも書いた通り、ムカデ人間は実験段階なんですよね。

つまり、言い換えればムカデ人間はまだ完成していないことになり、それを完成させるのは『ムカデ人間2』の主人公マーティンなのか!?という話です。



今作『ムカデ人間2』は『ムカデ人間』のエンドロールから始まります。
知的障害者であるマーティンは『ムカデ人間』が大好きで大好きで堪らないんですよ。


誰だって偏愛映画ってのはありますよね?
私は『ムカデ人間』がオールタイム・ベストです!

素晴らしいじゃないですか!
なにも変な映画が好きであること、を言っているんじゃないんです。
人と違うものを好きになること、自分が好きだと思える何かがあること、これって素晴らしいことなんですよ。

マーティンにとってはそれが映画『ムカデ人間』だったわけです。




映画は人生を変えてしまうほどの影響があるのか?
正直なところ、僕には分かりません。

しかし、しかしですよ?
考え方、価値観、想像力、思いやり、嗜好。
これらに少なからず影響はあると思っています。

例えば心に残る台詞、目に焼き付いている役者の演技、登場人物の行動、映像表現、監督のメッセージ。
もしかすれば、誰かの救いにも、生きる希望にも、はたまた今作『ムカデ人間2』のように悪影響を受けることになるかもしれません。

マーティンにとってはそれが映画『ムカデ人間』だったわけです。(2回目)



「つ・な・げ・て・み・た・い」というハイター博士の好奇心が刺激したマーティンの好奇心。
今作『ムカデ人間2』では、前作を凌ぐ12人の人間が数珠つなぎにされます。

マーティンの『ムカデ人間』に対する熱い想いが込められた数珠つなぎだと思いませんか!?



"12"という数字の美しさ


さて、本格的な考察に進みます。
今作『ムカデ人間2』では12人が数珠つなぎになりますよね?
この数字はどこから来たのでしょうか?


前作『ムカデ人間』では3人という実験段階での実施でした。
3人は単純に人数が少ないことも理由のひとつですが、個人的な見解では昆虫に準えた形だと思っています(正確にはムカデは昆虫ではない)。
頭部となる人間、胸部となる人間、腹部となる人間。
それぞれに役割を担っていたと考えられます。


今作では12人です。
いきなり数が4倍になりました。
何故4人ではダメだったのでしょうか?
何故10人ではダメだったのでしょうか?



・神学的に見る"12"の数字

新約聖書では、キリストの12人の使徒。
ペトロ、(ゼベダイの子)ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、フィリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、(アルファイの子)ヤコブ、タダイ、シモン、イスカリオテのユダ)。

ギリシア神話では、オリンポス山の山頂に住んでいる12神。
ゼウス、へラ、アテナ、アポロン、アフロディテ、アレス、アルテミス、デメテル、ヘパイストス、ヘルメス、ヘスティア、ポセイドン。

アメリカやイギリスの陪審員は12人で、これは陪審員制度の起原となった9世紀初頭のフランク王国において12名の陪審員が立てられたことによるとされていますが、キリストの12人の使徒が由来とも言われています。



・数字の表現で見る"12"の数字

以前まではイギリス等では10進法ではなく12進法が使用されていました。
1971年までは英国通貨の1シリングは12ペンス。
現代においてもその名残はあります。

例えば、計量法における1フィートは12インチ。
貴金属や宝石の計量に使用される1トロイポンドは12トロイオンス。
1ダースは12個、 1グロスは12ダース、12グロスを1グレートグロス。

英語で11はeleven、12のことはtwelve。
13以上になるとthirteenのように"〜teen"という表現が用いられており、10ではなく12を区切りにしています。
ドイツ語でも11はelf、12はzwölf。
13以上はdreizehnというように"~zehn"という表現になっています。

また、音楽の世界では平均律。

平均律(へいきんりつ)は、1オクターヴなどの音程を均等な周波数比で分割した音律。一般には十二平均律を指すことが多い。
平均律 - Wikipediaより引用

ピアノの鍵盤で1オクターブのドからシまでに、白が7個と黒が5個の計12個。

このように"12"という数字は様々な所で見られます。



・『ムカデ人間2』で見る"12"の数字

図形をご覧ください。
前作『ムカデ人間』の3人を基準に考えると、円形に繋いだ時には正三角形となります。

正三角形を2つ重ねれば正六角形が描けます。

更に正三角形を4つ重ねると正十二角形が描けます。

正四角形や正十角形を正確に描くことは難しいですよね?
正三角形を基準にすると正十二角形を簡単に描くことができます。



1年が12ヶ月なのは、暦(月)の動きに関連しています。
これは、月が1年間に地球をほぼ12回転することからきていて、地球から見ていると月の満ち欠けは1年間に12回繰り返されるということになります。

この天体の動きは星座にも関係します。
黄道十二星座(おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、おとめ座、てんびん座、さそり座、いて座、やぎ座、みずがめ座、うお座)です。

更に方角や時間を示す十二支(子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥)。


このように、正十二角形は現実世界に使われている円形のひとつの形となるんです。


劇中でもマーティンは12人の数珠つなぎを行う際に円形に並べていました。

マーティンが目指したものは実験段階であった『ムカデ人間』の完成形。
この"12"という数字を使い、実験的ではなく現実的に可視化したわけですね。


その12人目に自分が入る。
自分を含めて初めて完成するムカデ人間。
実に美しいではありませんか。

※実際は汚い画です。



『ムカデ人間2』で伝えたいこと

『ムカデ人間』の考察でも書きましたが
食糞は仏教の六道における餓鬼道。
人道に反するものなんです。

その人道に反する行為を模倣する今作『ムカデ人間2』。
上記に
《もしかすれば、誰かの救いにも、生きる希望にも、はたまた今作『ムカデ人間2』のように悪影響を受けることになるかもしれません。》
と記載しました。


かもしれません。
そうなんです、ラストで今まで散々見させられてきたグロ描写は全て夢でした!というタネ明かしをしますね?
これは、現実と虚構の境界線を明確に線引きした「現実でこんなことをしてはいけませんよ!」といった真面目な説教だけではありません。

『ムカデ人間2』は、映画『ムカデ人間』の影響を受けた人間が如何にして変態的素養を得たのか?を見せることで、映画が悪影響を及ぼすのではなく影響を受ける人間が問題なのだという現代社会にも通じる社会派メッセージを残してるんですよ!



犯罪を犯した者が所持する娯楽作品に罪はない。
更に言えば

映画の、フィクションの影響を受けて模倣する、犯罪に手を染めてしまう人間は、映画『ムカデ人間』が大好きで大好きで堪らない『ムカデ人間』を実現しちゃう妄想や夢まで見ちゃう知的障害者のマーティンよりも狂った人間なんだぞ!と我々へ鋭い刃を突きつけるものなんですよ!


おいおいおいおい、こんな汚い映画でよくもまあこんなメッセージを残せるな!
最後まで観る人少ないぞ!
というツッコミはご遠慮ください(笑)



終わりに

如何でしたでしょうか?
僕の『ムカデ人間2』に対する熱…ゲフンゲフン。
マーティンの『ムカデ人間』に対する熱い想いとトム・シックス監督の我々に対する熱いメッセージは伝わったでしょうか?(笑)


ということで、前作『ムカデ人間』は軽い気持ちで観られますが、今作『ムカデ人間2』は気合いを入れないと観られないかもしれません。

批判云々は構いません、現実に見るに堪えないという描写も多々あります。
しかし、ただ汚い、グロいだけの映画ではなく、ちゃんとメッセージ性のある映画であることはご理解していただきたいんです。



最後までお読みくださった方、ありがとうございました。



(C)2011 SIX ENTERTAINMENT