小羊の悲鳴は止まない

好きな映画を好きな時に好きなように語りたい。

2019年映画ベスト

目次




初めに

こんばんは、レクと申します。
今年最後のブログ更新となりますので、まずは挨拶から。

年の瀬も押し詰まってまいりましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか?
皆様方のお力添えにより今年も無事(?)にブログを続けられましたことを厚く御礼を申し上げます。

更新頻度は低めではございますが、来年も何卒よろしくお願い申し上げます。


では今年2019年に劇場鑑賞した映画のベスト10を紹介していきます。
が、まず2019年の劇場鑑賞作品から、ドーン!


劇場鑑賞数は196本(旧作含む)。
※但し、この記事のランキングは旧作を含みません。


これに加えて自宅鑑賞数271本。
自宅鑑賞はランキングには含まれておりません。
こちらは劇場鑑賞旧作と共に、当記事とは別にTwitterに上げさせていただきます。



次点10作

まずは残念ながらベスト10に入らなかったけど、これも外せないと思う作品を10作品、ご紹介させていただきます。


「幸福なラザロ」

(C)2018 tempesta srl ・ Amka Films Productions・ Ad Vitam Production ・ KNM ・ Pola Pandora RSI ・ Radiotelevisione svizzera・ Arte France Cinema ・ ZDF/ARTE

ネタバレ考察

タイトルのラザロは聖人ラザロから。
ヘブル語でエルアザル(神はわが助け)という意味を持ち、新約聖書の内容を知っていると更に楽しめる部分は大いにあります。
ですが、聖書を全く知らなくても一つの作品として異質な雰囲気を纏う、聖人ラザロが現代社会を見据えた映画となっています。




「ジュリアン」

(C)2016 - KG Productions - France 3 Cinema

感想

こちらも「幸福なラザロ」同様に上半期ベストでした。
ネタバレなしなので感想をお読みいただければと思いますが、すべてを凪とする圧倒的な余韻。これに限る。
内容自体は暗くしんどいものですが恐らく、鑑賞後の衝撃、エンドロールの余韻だけ言えば今年のベスト。




「荒野にて」

(C)The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2017

感想

こちらも上半期ベスト。
馬と一緒に孤独感を乗り越えて自身の居場所を見つけていくロードムービーなのですが、抑制された落ち着いた演出がひとつひとつグサグサと心に刺さり、尚且つ客観的にも彼らの生き様を見届けさせてくれる。
鑑賞後に"今"が少し変わって見えた。




「シークレット・スーパースター」

(C)AAMIR KHAN PRODUCTIONS PRIVATE LIMITED 2017

感想

えー、上半期で公開された「バジュランギおじさんと、小さな迷子」は残念ながらランキング圏外ですが(言っちゃった)、今年の下半期はインドインドです!
この映画も同様にベタはベタなんですが、泣かされるんですよね。
めちゃくちゃ好きな映画です、3回泣いた。
インド映画を敬遠されている方も一度観てみていただきたい。




「ハウス・ジャック・ビルト」

(C)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31,ZENTROPA SWEDEN,SLOT MACHINE,ZENTROPA FRANCE,ZENTROPA KOLN

ネタバレ考察

ラース・フォン・トリアー鬱治ったんか!?」
これが鑑賞後の僕の感想です(笑)
自己投影の主張が強く、トリアーとしても薄味ですが、特にラストシークエンスは笑いましたね。
人の最終的な価値を決めるのは、生前ではなく死後である。
ダンテの『神曲』等を下敷きに歪んだ倫理観を芸術へと転換したギャグ映画です。




サスペリア

(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC All Rights Reserved

ネタバレ考察

これは年間ベストに入れたかった。
ダリオ・アルジェントのオリジナル版の設定であるホロコースト魔女狩りに比喩したテーマに沿いながら、良い意味でリメイクという枠を持ち前のセンスによって囚われることのない自由な発想で手掛けたルカ・グァダニーノ
その点においてめちゃくちゃ評価しています。
ルカ版三部作に期待してます!




「ジョーカー」

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

ネタバレ考察

もう今年の公開映画の顔と言ってもいいのがこちらですね。
この映画によってホアキン・フェニックスを評価していなかった方にも評価されるようになって嬉しい。
もう語ることもないのであれですが
"笑いとは即ち、反抗精神である。"
かの有名な喜劇王チャップリンと重なる人生も多く、ホアキンの過去作で培った演技の集大成でもあるように思う。




「魂のゆくえ」

(C)Ferrocyanide, Inc. 2017. All Rights Reserved.

ネタバレ感想

こちらも上半期ベスト。
本来なら年間ベストにも入ってます、確実に。
「幸福なラザロ」のように宗教的な側面も強く、主にヨハネの黙示録11章18節に準えられていますが聖書を知らなくともポール・シュレイダーの力強いメッセージが伝ってきます。
希望と絶望、二つの矛盾を抱える人間の心情、その機微、心をすり減らしていく様が今でもこの目に焼き付いている。




「象は静かに座っている」

(C)Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen

感想

「サタンタンゴ」タル・ベーラ監督を師と仰ぐフー・ボー監督による圧巻の234分。
男女の群像劇、崩壊の美しさと僅かに光る希望。
年間ベストに入れてないのに言うのも烏滸がましいのですが、29歳という若さでこの世を去った彼の長編デビュー作にして遺作はいつまでも僕の心の中に刻まれると思います。




「ウスタード・ホテル」

『インディアンムービーウィーク2019』公式サイト|北から南まで、多様なインド映画を紹介します

感想

インディアンムービーウィーク2019での上映作品。
人生と夢、青年の成長、食の思想と愛情、その裏側にあるインドの社会問題。
少し強引な所も目立つが、やはりインド映画。
感動するところはしっかりと惹き込む力を持ち、その説得力をもって涙を誘う。
せこい(笑)
また、この映画に関しては飯テロなので、空腹時は注意が必要だ。



特別枠


ここで、ベスト10に入る前に今年一番笑った映画をご紹介しておきます。
とはいえ残念ながら20位にはランクインせず…(笑)


ピアッシング

(C)2018 BY PIERCING FILM. LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

感想

何度でも言います。変態映画です(笑)
完成度で言えばまだまだ粗はありますが、好みだけで突っ走り惚れた一作。
ジャッロ的スリラーの枠組みでヴァーホーヴェンのような変態性を併せ持ちながら、まるでアンジャッシュのコントを見せてくれる。
そんな変態映画です。
※少々グロ描写あり




また、今年は貴重な映画体験、オールタイムベスト更新と新旧に関わらず良い映画に出会えた特別な年になりました。
その作品も幾つかご紹介させていただきます。



まずはイ・チャンドン監督作「バーニング 劇場版」公開に合わせてリバイバル上映されたこちら。

「オアシス」

(C)2002 Cineclick Asia All Rights Reserved.

感想

前科3犯の男と脳性麻痺の女、不自由な二人が人倫から隔離される二人だけの世界。
我々観客の倫理観や道徳概念をぶち壊し、従来の恋愛映画とは明らかに一線を画す純愛映画。
超絶大傑作です。
何よりヒロインを演じたムン・ソリの演技がやべえです。マジでやべえです。
鑑賞後、「何も言えねえ」状態で席を立てませんでした。
オールタイムベスト更新!




同じく、今年の劇場鑑賞でオールタイムベストとなったこの映画。

「ザ・バニシング-消失-」

(C)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

感想

この映画の凄い点は偶然という名の必然、日常で起こりそうで起こらなさそうなその曖昧な境界線を描いていること。
その正常と異常が同時に混在する、これは"シュレーディンガーの猫"の思考実験そのものです。
圧倒的な説得力を持たせる殺人衝動は「ハウス・ジャック・ビルト」や「ピアッシング」に少なからず影響は与えていると思います。
双方を鑑賞した方なら必ずわかるオマージュが演出されてますよ(笑)




次に、絶対に外せないのがこちら。
上映時間438分、全編約150カットという驚異的な長回し映像で構成。
4年の歳月をかけて完成させたタル・ベーラ監督による伝説の傑作。

「サタンタンゴ」

映画『サタンタンゴ』公式サイト

ネタバレ考察

今年で最も力を入れ時間を掛けて書いたブログです。
内容を纏めること、調べ物、起稿、そして二回目の鑑賞と費やした時間だけで言えば約1ヶ月。
そこまでさせた何かがあるのは確かなのですが、何よりも貴重な映画体験をさせてくれた京都のミニシアター、京都みなみ会館と出町座に感謝したい。

それからこの映画を観て確かなことがひとつあります。
それは、映画の見方が変わったこと。
この影響は自分にとって大きいです。
438分という長時間の上映故に簡単にはオススメできない映画ですが、映画人生の中で一度は観ておかないといけない、そんな映画だと思います。
いや、鑑賞後の達成感からかそう思わせてくれます(笑)
言わずもがな、こちらもオールタイムベストに入りました。



10位〜4位

では本題に入っていきます。
10位から4位まで一気にいきます!

10位「岬の兄妹」

(C)SHINZO KATAYAMA

解説

ポン・ジュノ監督作品や山下敦弘監督作品などで助監督を務めた片山慎三の初長編監督作。ある港町で自閉症の妹・真理子とふたり暮らしをしている良夫。仕事を解雇されて生活に困った良夫は真理子に売春をさせて生計を立てようとする。良夫は金銭のために男に妹の身体を斡旋する行為に罪の意識を感じながらも、これまで知ることがなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れることで、複雑な心境にいたる。そんな中、妹の心と体には少しずつ変化が起き始め……。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の国内コンペティション長編部門で優秀作品賞と観客賞を受賞。
岬の兄妹 : 作品情報 - 映画.comより引用


感想

上半期ベストからの年間ベストにランクイン!
人間の本質とは?
貧困を問題提起とし、社会的弱者と我々との齟齬、健常者から見た障碍者への差別にまで落とし込んだ小規模上映故に痛烈なメッセージを突きつけるブラックユーモア。
そして、ひとつひとつのショットに散りばめられたメタファー。
片山慎三監督が二作目を撮るなら観ますよ、絶対に。
また、妹役の和田光沙さんは要注目ですね。




9位「ちいさな独裁者」

(C)2017 - Filmgalerie 451, Alfama Films, Opus Film

解説

「RED レッド」や「ダイバージェント」シリーズなどハリウッドで活躍するロベルト・シュベンケ監督が母国ドイツでメガホンをとり、第2次世界大戦末期に起きた実話をもとに描いたサスペンスドラマ。1945年4月。敗色濃厚なドイツでは、兵士の軍規違反が続発していた。命からがら部隊を脱走したヘロルトは、偶然拾った軍服を身にまとって大尉に成りすまし、道中出会った兵士たちを言葉巧みに騙して服従させていく。権力の味を知ったヘロルトは傲慢な振る舞いをエスカレートさせ、ついには大量殺戮へと暴走しはじめるが……。出演は「まともな男」のマックス・フーバッヒャー、「ヴィクトリア」のフレデリック・ラウ、「顔のないヒトラーたち」のアレクサンダー・フェーリング。
ちいさな独裁者 : 作品情報 - 映画.comより引用

感想

自分が思う"この映画の凄いところ"はもう感想にすべて吐き出しているので、過去のドイツ映画を例に書き出した上の感想を読んでみてくださいとしか言えないのですが、人間が必ず持っている善悪や道徳、倫理観などの簡単には二極化できないグレーゾーンを見事に描ききっていますね。
今までのドイツの歴史やナチスが与えた各国への影響、そしてホロコーストの残した爪痕。
この辺りに精通しているとまた見方も変わってくると思います。




8位「よこがお」

(C)2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS

解説

カンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員賞を受賞した「淵に立つ」の深田晃司監督が、同作でもタッグを組んだ筒井真理子を再び主演に迎え、不条理な現実に巻き込まれたひとりの善良な女性の絶望と希望を描いたサスペンス。周囲からの信頼も厚い訪問看護師の市子は、1年ほど前から看護に通っている大石家の長女・基子に、介護福祉士になるための勉強を見てやっていた。ニートだった基子は気の許せる唯一無二の存在として市子を密かに慕っていたが、基子から市子への思いは憧れ以上の感情へと変化していった。ある日、基子の妹・サキが失踪する。1週間後にサキは無事に保護されるが、誘拐犯として逮捕されたのは意外な人物だった。この誘拐事件への関与を疑われたことを契機に市子の日常は一変。これまで築きあげてきた生活が崩壊した市子は、理不尽な状況へと追い込まれていく。主人公・市子役を筒井が演じるほか、市川実日子池松壮亮吹越満らが脇を固める。
よこがお : 作品情報 - 映画.comより引用

感想

鑑賞後の余韻の凄さ。
来ましたね、堂々の8位にランクイン!
ここまでかというくらい人の二面性をとことん突き詰め、それを可視化することで本音と建前、主観と客観の乖離を顕にする。
深田晃司監督のドラマ「本気のしるし」でも感じたことですが、人の抱く感情を主観と客観から揺さぶる不快感の演出が非常に巧みだということ。
監督の作家性が爆発したこの映画のラストに僕の心は殺された。




7位「ボーダー 二つの世界」

(C)Meta_Spark&Karnfilm_AB_2018

解説

ぼくのエリ 200歳の少女」の原作者ヨン・アイビデ・リンドクビストが自身の原作をもとに共同脚本を手がけ、第71回カンヌ国際映画祭ある視点部門でグランプリを受賞した北欧ミステリー。醜い容姿のせいで孤独と疎外感を抱える税関職員ティーナには、違法な物を持ち込む人間を嗅ぎ分けるという特殊能力があった。ある日、彼女は勤務中に奇妙な旅行者ボーレと出会う。ボーレに対し本能的に何かを感じたティーナは彼を自宅に招き、離れを宿泊先として提供する。次第にボーレに惹かれていくティーナだったが、ボーレにはティーナの出生にも関わる大きな秘密があった。
ボーダー 二つの世界 : 作品情報 - 映画.comより引用

感想

この映画はもう映画としての出来ではなく完全なる趣味嗜好というか好みだけで7位です(笑)
正直、後半はあらゆる要素を放り込みすぎて原作を無理矢理に押し込んだ形になっているのが惜しいところではあるのですが、それすらも許せてしまうこの北欧の雰囲気と世界観。
"自分は誰なのか?"
独特な映画的"呼吸"のリズムにアイデンティティを模索するテーマ。
好きが詰まってる。




6位「宮本から君へ」

(C)2019「宮本から君へ」製作委員会

解説

テレビドラマ化もされた新井英樹の人気漫画を池松壮亮主演、 ヒロイン役を蒼井優のキャストで実写映画化。「ディストラクションベイビーズ」の真利子哲也監督がメガホンをとった。超不器用人間ながら誰よりも正義感の強い宮本浩は、文具メーカーで営業マンとして働いていた。会社の先輩である神保の仕事仲間、中野靖子と恋に落ちた宮本は、靖子の自宅に招かれるが、そこに靖子の元彼である裕二がやってくる。靖子は裕二を拒むために宮本と寝たことを伝えるが、激怒した裕二は靖子に手を挙げてしまう。そんな裕二に、宮本は「この女は俺が守る」と言い放ったことをきっかけに、宮本と靖子は心から結ばれるが……。宮本役を池松、靖子役を蒼井、神保役を松山ケンイチらドラマ版のキャストが顔をそろえるほか、裕二役を井浦新が演じる。
宮本から君へ : 作品情報 - 映画.comより引用

感想

勢いそのまま感情的にツイートしてしまったくらいの超絶大傑作!
鑑賞後には叫びながら走り出したくなるほど熱量がハンパない、男になるってこういうこと、生きてるってこういうこと。
キャストに対して熱演の一言で片付けちゃだめな気がするくらいの力の入った素晴らしい演技。
そしてしばらくの間、ずっと宮本浩次の「Do you remember?」がリピートされる脳内麻痺。
しびれた。




5位「盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲」

(C)Viacom 18 Motion Pictures (C)Eros international all rights reserved

解説

盲目を装っているピアニストが殺人事件を目撃してしまったことをきっかけに、クセの強い登場人物たちが繰り広げる裏切りや騙しあいを描いたインド製のクライムコメディ。本当は目が見えるが、芸術のために盲目で通しているピアニストのアーカーシュは、ある日、大スターのプラモードから演奏を依頼され、彼の豪邸を訪ねる。しかし、そこでプラモードの妻シミーが、不倫相手と結託してプラモードを殺害している現場を目撃してしまう。死体も犯人も見えないフリでその場を切り抜けたアーカーシュだったが、駆け込んだ警察の署長こそ、現場にいた犯人だった。そこからアーカーシュの災難はさらに続き……。監督は「エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ」のシュリラーム・ラガバン。アーカーシュ役を演じたアーユシュマーン・クラーナーのほか、「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」のタブー、「パッドマン 5億人の女性を救った男」のラーディカー・アープテーらが出演。
盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲 : 作品情報 - 映画.comより引用

感想

韓国映画「ブラインド」の邦画リメイクとして今年公開された「見えない目撃者」、この映画が視覚障害者が殺人事件を目撃するのなら、インド映画「盲目のメロディ」は視覚障害者を装うピアニストが殺人事件を目撃する。
‪フランスの13分短編映画「L'accordeur(ピアノ調律師)」‬に着想を得て作られてますが、そこから更に脚色し最高の娯楽映画へと仕上げていてぶっ飛んでる(褒めてます)。
もういいよってくらい二転三転する展開に笑撃。
この上映時間で意味のない描写が一つもないなんて、そんなことあり得るのか!?
盲目という盲点を突いたアイデアも然ることながら、最後まで引っ張って飽きさせない演出の素晴らしさ。




4位「ホテル・ムンバイ」

(C)2018 HOTEL MUMBAI PTY LTD, SCREEN AUSTRALIA, SOUTH AUSTRALIAN FILM CORPORATION, ADELAIDE FILM FESTIVAL AND SCREENWEST INC

解説

2008年のインド・ムンバイ同時多発テロでテロリストに占拠されたタージマハル・パレス・ホテルでの人質脱出劇を、「LION ライオン 25年目のただいま」「スラムドッグ$ミリオネア」のデブ・パテル主演で映画化。2008年11月、インドを代表する五つ星ホテルが500人以上の宿泊客と従業員を人質にテロリストによって占拠された。宿泊客を逃がすために、プロとしての誇りをかけてホテルに残ったホテルマンたち。部屋に取り残された赤ちゃんを救出するため、決死の覚悟で銃弾の中へと向かう父と母。テロリストたちに支配される極限の状況下で、特殊部隊の到着まで数日という過酷な現実を前に、人々の誇りと愛に満ちあふれた脱出劇が描かれる。パテルが宿泊客を守ろうとするホテルマン役を演じるほか、「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマーアメリカ人旅行客役で出演。監督はこれまでも数多くの短編作品を手がけ、本作が長編初監督作となるオーストラリア出身のアンソニー・マラス。
ホテル・ムンバイ : 作品情報 - 映画.comより引用

感想

フィクションとノンフィクションの境界線を濁す圧巻の恐怖と臨場感。
実話を基にテロ事件による蹂躙を描いた映画は数多くあるが、その中でも今作は犯人側の描き方に秀でています。
"祈らなくていい。それがすべての元凶だ"
宗教の違いは実際のところ横並びにはならず、妥協や容認できない些細なことをきっかけに事が大きく発展してしまう。
ある種の群像劇のように観客、ホテルマン、犯人、街の人々と非常にバランスが整っていますね。
映画の出来だけで言えばベスト3に入ります。



ベスト3

ここからは年間ベスト3です。
焦らすのもあれなので、もう発表しちゃいますね!









(ドラムロール音)










第3位「存在のない子供たち」

(C)2018MoozFilms

解説

長編デビュー作「キャラメル」が高い評価を得たレバノンの女性監督ナディーン・ラバキーが、貧しさゆえに親からまともな愛情も受けることができずに生きる12歳の少年の目線を通し、中東の貧困・移民問題を抉り出した人間ドラマ。中東の貧民窟で暮らす12歳のゼインは、貧しい両親が出生届を提出していないため、IDを持っていない。ある日、ゼインが仲良くしていた妹が、知り合いの年上の男性と強制的に結婚させられてしまい、それに反発したゼインは家を飛び出す。仕事を探そうとしたがIDを持っていないため職に就くことができない彼は、沿岸部のある町でエチオピア移民の女性と知り合い、彼女の赤ん坊を世話しながら一緒に暮らすことになる。しかしその後、再び家に戻ったゼインは、強制結婚させられた妹が亡くなったことを知り……。2018年・第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞とエキュメニカル審査員賞を受賞。
存在のない子供たち : 作品情報 - 映画.comより引用


感想

子役がすげえ…主演のゼイン・アル・ハッジ。
ドキュメンタリー映画か?と錯覚するほどリアリティのある自然な演技。
今こうしてアホ面こきながら鼻をほじりブログを書いている途中にもこの世界のどこかでは同じような子供たちがいるんだと思うと…。
映画を思い出すだけで胸が痛い。

人の親となるすべての人たちにこの映画を観てもらいたい、それくらい過剰に思ってしまうほどこの映画が含意するメッセージは強い。
単なる貧困ポルノではない、児童虐待やネグレクトといった最悪なニュースが流れてくる今を生きる我々にとって必要なものだと思う。
少なからず、僕の熱いメッセージを汲み取れたのなら、未鑑賞の方は是非観てください。










第2位「'96」

『インディアンムービーウィーク2019』公式サイト|北から南まで、多様なインド映画を紹介します

解説

1996年に高校を卒業したクラスメートが20年ぶりに集う同窓会。旅行写真家のラームは、初恋の女性ジャーナキに再会して心が揺れる。宵の口から夜明けまでのチェンナイの街を舞台にした2人の対話。
『インディアンムービーウィーク2019』公式サイト|北から南まで、多様なインド映画を紹介しますより引用


感想

インディアンムービーウィーク2019の上映作品。
この映画も映画としてのクオリティ云々ではなく、僕個人の好きが爆発した映画です。
というのも、愛した女性を生涯大切に思うというインドの国民性が純粋に示され、そんな素直な演出が優しく包み込んでくれるのだ。
下品な言い方をしますが、思い出話に耽る男女の一夜限りの心のセックス(笑)
実現しない妄想、夢や願い。
そういったものが心の支えとなっているなんて素敵でしょ?

感情面を別にして、この映画で最も評価しているのは男性視点から女性視点へといつしか切り替わっていることなんですよ。
この快感は観てもらわないと伝わらないので言葉では説明出来ませんが、マジかぁ…ってなります。
もうね、この映画が好きすぎて今年はもうだめかと思いました。










1位「僕たちは希望という名の列車に乗った」

(C)Studiocanal GmbH Julia Terjung

解説

ベルリンの壁建設前夜の東ドイツを舞台に、無意識のうちに政治的タブーを犯してしまった高校生たちに突きつけられる過酷な現実を、実話をもとに映画化した青春ドラマ。1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルトは、西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を見る。自由を求めるハンガリー市民に共感した2人は純粋な哀悼の心から、クラスメイトに呼びかけて2分間の黙祷をするが、ソ連の影響下に置かれた東ドイツでは社会主義国家への反逆とみなされてしまう。人民教育相から1週間以内に首謀者を明らかにするよう宣告された生徒たちは、仲間を密告してエリートとしての道を歩むのか、信念を貫いて大学進学を諦めるのか、人生を左右する重大な選択を迫られる。監督・脚本は「アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男」のラース・クラウメ。
僕たちは希望という名の列車に乗った : 作品情報 - 映画.comより引用


感想

上半期ベスト1位が結局年間ベスト1位でした。
というつまらないランキングとなってしまいましたが仕方ないです。
だって好きなんだもん。
自分の気持ちに嘘はつけない!

"我々ドイツ人にとって、奇跡的な経済復興とゲーテやヴェートーベンを生んだ国であるということは、とっても大きな誇りになっている。
だが、その一方でドイツは、ヒトラーアイヒマン、そしてそのお仲間を生んだ国であるというのも事実である。"
(『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』冒頭より引用)

前作「アイヒマンを追え!」からもラース・クラウメ監督が描く映画のメッセージが読み取れる。
監督は映画を通して我々観客に、 ドイツが誇れる人物を、物語をもっと多くの人に知ってもらいたい。
歴史を変えた英雄を、時代の矛盾に苦しんだ者たちの奮闘する姿を伝えたいのではないか?

人生においてターニングポイントとなる場面は必ず来ます。
選択の重要性、自身で出した答え。
どのような状況であっても前を向いて生きていく。
希望に溢れた物語はそんな決断に光を当てて応援してくれるような、自分にとって特別な映画になりました。
いやはや、アッパレ!(死語)
やっぱドイツ映画好きだなあ。



終わりに

もし、ご覧になられていない作品が御座いましたら是非。
ちなみにタイトルのみ箇条書きにしますが、今年2019年映画ベスト30はこちらになります(10作品増えた)。


僕たちは希望という名の列車に乗った
'96
存在のない子供たち
ホテル・ムンバイ
盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲
宮本から君へ
ボーダー 二つの世界
よこがお
ちいさな独裁者
岬の兄妹

ウスタード・ホテル
象は静かに座っている
魂のゆくえ
ジョーカー
サスペリア
ハウス・ジャック・ビルト
シークレット・スーパースター
荒野にて
ジュリアン
幸福なラザロ

サルカール 1票の革命
アス
アマンダと僕
工作 黒金星と呼ばれた男
バハールの涙
ひとよ
凪待ち
サンセット
あなたの名前を呼べたなら
デイアンドナイト


特別枠
ピアッシング
オアシス
ザ・バニシング-消失-
サタンタンゴ




今年も劇場鑑賞を逃してランキングをつける際に観ておけばよかったなと思う作品は多々ありましたが、今年は例年以上に良い映画に数多く出会えた年だと思います。

特に新旧問わずインドインドした一年で、下半期は劇場でも自宅でもほぼほぼインドインドしてました。

ということで(?)
来年も自分にとっての傑作に出会えることを。
そして、皆さんにとっての傑作が見つかることを…ってこれ毎年言ってるような気がしますね(笑)



改めまして、今年最後のご挨拶。

何かとご多忙のことと存じますが、皆様くれぐれもご自愛ください。
良いお年を!