小羊の悲鳴は止まない

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束縛からの解放(「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」ネタバレ感想)

目次




初めに

こんにちは、レクと申します。
今回は書くつもりがなかったのですが、「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」について語っています。

考察ではなく、感想…と言いますか僕が感じたことをそのまま言葉にしようと思っています。
少し批判的な意見も入りますが、一個人の意見として聞き流していただければ幸いです(笑)

また、この記事にはネタバレを含みます。
未鑑賞の方はご注意ください。



作品概要


原題︰Birds of Prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn
製作年︰2020年
製作国︰アメリカ
配給︰ワーナー・ブラザース映画
上映時間︰109分
映倫区分︰PG12


解説

「スーサイド・スクワッド」に登場して世界的に人気を集めたマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインが主役のアクション。悪のカリスマ=ジョーカーと別れ、すべての束縛から解放されて覚醒したハーレイ・クイン。モラルのない天真爛漫な暴れっぷりで街中の悪党たちの恨みを買う彼女は、謎のダイヤを盗んだ少女カサンドラをめぐって、残忍でサイコな敵ブラックマスクと対立。その容赦のない戦いに向け、ハーレイはクセ者だらけの新たな最凶チームを結成する。マーゴット・ロビーが自身の当たり役となったハーレイ・クインに再び扮し、敵役となるブラックマスクをユアン・マクレガーが演じた。監督は、初長編作「Dead Pigs」がサンダンス映画祭で注目された新鋭女性監督キャシー・ヤン。
ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY : 作品情報 - 映画.comより引用




DCEUの新たな風

DCエクステンデッド・ユニバース(DC Extended Universe (DCEU))はマーベル・シネマティック・ユニバース(Marvel Cinematic Universe)との差別化を図るため全てが一つに繋がるユニバースとしての形から個々の特徴を活かした単作品の排出を選んでいますよね?

『スーパーマン』や『バットマン』シリーズから『ジャスティス・リーグ』へ。
そこから『アクアマン』や2020年公開『ワンダーウーマン 1984』とユニバース方面の映画も同時進行。
そして、2021年には『The Batman』『The Suicide Squad』と続きます。


MCUはどうしても単作品で途中から入りにくい、謂わば新参者に優しくない仕様となっているのに対して、DCEUは2019年公開『シャザム!』のように単品でも楽しめる新参者にも優しい仕様の映画も作られています。

現に今作『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(以下BIRDS OF PREY)』も『スーサイド・スクワッド』と一応は繋がりがあるのですが、前作を知らなくても、DCEUを知らなくても楽しめる映画となっていました。


これは2019年の顔と言っても過言ではない映画『ジョーカー』でも言えること。


『ジョーカー』は厳密に言えばDCEUのユニバースとしての繋がりはなく、世界線も異なる。
製作会社にDCフィルムズが絡んでいますが、DCEU作品ではありません。
故にDCEU初見でも、アメコミを知らない人でも一つの映画として楽しめる親切設計となっています。


『ジョーカー』と同様に社会風刺を練り込み、DCEUが打った次なる一手がこの今作『BIRDS OF PREY』。
またハロウィンの仮装などでも人気を博したハーレイ・クインが主人公というアメコミを知らない方々にも観てもらえるようにといった背景も見えます。



ネタバレ感想

では、早速本題に入っていきましょう。
まずはTwitterに上げた感想から。



私個人が受け取った今作『BIRDS OF PREY』の物語。

それは

ハーレイ・クインが主人公ではない

ということ。


上記に「人気を博したハーレイ・クインが主人公というアメコミを知らない方々にも観てもらえるように」と記載しましたが、実際はこの映画の主人公はハーレイ・クインではありません。


観ていただいた方にはわかっていただけると思いますが、この物語は‪ブラックキャナリー、ハントレス、レニー・モントーヤの3人がそれぞれ虐げられた者としての解放や自立、そしてチームの誕生譚であること。

つまり、籠の中の鳥が飛び立つことを意味し、ハーレイ・クインはその一役を担うだけ。‬
‪それらを繋げるきっかけがダイヤを盗んだカサンドラであり、ジョーカーとハーレイ・クインの関係性がBIRDS OF PREYのメンバーの自立と連想される。

だからこの物語の語り部が、ハーレイ・クインなのです。


原題『Birds of prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn』からもわかる通り
BIRDS OF PREYの3人が主人公であり、ハーレイ・クインの解放、自立はあくまでサブストーリーなんですよ。

ここの見解の相違でこの映画から受け取る印象も、そもそもの評価も変わってきてしまうと思います。


そして、『ジョーカー』と同じく社会風刺が練り込まれている。
それが社会的弱者の救済なのですが、女性たちを主人公としたことで見えてくるフェミニズムの押し出し。

ここがどうも個人的には少々クドさが残ったんですよね。
その理由はちゃんとあります。



女性を主人公として描く単純な【ヒロイズム】ではないこと。

例えば
同じくDCEUの映画『ワンダーウーマン』では女性監督ならではの視点から見た男尊女卑の偏見や先入観をダイアナという女性目線のフィルターを通してジェンダーレスな作品へと昇華しています。

個人的な引っかかりがあり、この映画自体はあまり評価していないのですが、このジェンダーレスの観点に関しての描き方は素晴らしいと思います。


MCUの映画『キャプテン・マーベル』に関してもそう。
90年代のジェンダー的な抑圧を軸にキャロルが"強い女性"ではなく"強くならなければならなかった女性"としてアイデンティティーに向き合う自立を描いています。


この2作に共通するものが女性を主人公として強い女性像を見せる【ヒロイズム】なのです。



では、今作『BIRDS OF PREY』はどうなのか?


まず、ハーレイ・クインに関して言えば
悪が公正したわけでもなく、所謂ダークヒロインのような存在であること。
(の割には終盤ただの良い人になっててキャラ崩壊してますが)

ジョーカーという後ろ盾がなくなったことで命を狙われる。
そんな危機感の中でジョーカーに囚われていた自分を解放し、立ち向かえる強さ(自立すること)を手に入れた。
それはあくまでも自分のやりたいようにやる、自分の生き方や生き様を見つけたようなもの。
故に、単純なヒロイズムではない。



一方で
BIRDS OF PREYの3人は悪と対を成すチーム、ヒロイズムとして描かれていますね。

ブラックキャナリー

シニオス(ブラックマスク)によって支配されていました。
ザーズから小鳥と揶揄されていたことからも籠の中のように逃げられない状態、束縛からの解放(emancipation)が描かれました。


ハントレス

幼少期にマフィアに一族を殺され、復讐心に燃える。
過去に囚われていたという意味で籠の中の鳥であると考えられ、ザーズを殺したことでその恨みから解放された。


レニー・モントーヤ

問題はここです、警察署内での上司の手柄の横取り。
女性ということで出世は出来ず警官を辞職、悪を取り締まることだけは継続することになる。

男社会という抑圧からの解放と見ればそうかもしれないが、レニー・モントーヤに関して言えば束縛からの解放や自立として見るにはあまりにも弱く、このキャラクター設定がフェミニズムを誤った方向で強調してしまっている。
加えて、元々警官ということで悪と敵対する立場であることからもヒロイズムとしての転換も弱く、却ってセクシズムに拍車を掛けてしまっていると思うんですよね。


悪vs正義が男vs女となっているとかそういったことでのセクシズムという話ではなく、ここがTwitterで書いた内容の全貌です(笑)
レニー・モントーヤというキャラクターが悪いのではなく、そもそもの設定と描き方に問題があり、そこが単に鼻についただけなんですが。



気になる点がもう一つ。
先程も記載した通り、この物語の主人公はBIRDS OF PREYの3人であり、ハーレイ・クインは主人公ではなく繋ぎであること。
そこでこの映画の形式上、ハーレイ・クインが語り部として物語が進行していくのですがその回想ですよ。

回想シーンは本来、主軸である物語の進行、テンポを著しく損ねる恐れがあります。
今作『BIRDS OF PREY』の回想シーンへの導入パターンは大きく分けて3つ。


1つ目はハントレスに殺されたマフィアの死体を警官であるレニー・モントーヤが状況把握するシーン。
過去と現在が交錯するように回想シーンを導入するんですよね。
これは個人的に好きな見せ方。
物語のテンポを損ねず過去と今を同時に映し出すことができています。


2つ目はブラックキャナリーがレニー・モントーヤにスマホで連絡をするシーン。
ハーレイ・クインがわざわざ説明をするために巻き戻し映像後に経緯を説明する。
これがもう全然ダメ。
特に伏線回収でもなんでもないシーンであり、ただこんな映像や撮り方も見せられるよ!と監督がニヤニヤしてるのがわかる。


3つ目はハントレスの過去。
これはぶつ切りで過去の時間軸に飛ぶお決まりのパターン。
これは仕方ないというか、まあそうだろうなって感じ。


この3パターンをそれぞれ見せる意味が全くわからない。
観客を飽きさせないため?
だとしたら見せる順番は違うし不用意に過去、回想シーンを挟まなくてもハーレイ・クインが語り部として語る以上は描くことも語ることもできたはず。
これらが物語のテンポにチグハグ感を覚えてノリ切れなかった理由の一つでもあります。



褒めるべき点はなんと言っても女性らしい女性ならではの柔軟性を活かしたアクション。
力のない女性が男を薙ぎ倒すための遠心力の凄まじさと爽快感に溢れ、スカッとしますね!

アクションを語れるほどアクション映画が好きなわけでもなく、こんな僕がアクションを語ること自体が烏滸がましいので割愛します。

アクションについては僕の意見なんかよりも、この手のジャンルが得意な方の意見を聞いた方が何万倍も役に立ちますよ(笑)



終わりに

ということで、フォロワーさんのモンキーさん(@‪monkey1119)と一緒に鑑賞してきたわけですが。

僕は『スーサイド・スクワッド』を基準にハードルを下げて観に行ったのでまあまあ良かったという感想でしたが、横を見た時のモンキーさんの顔は今でも忘れられません(笑)

そんなモンキーさんの感想はこちら。

こちらも一読よろしくお願いします!



さてさて、僕個人が引っかかったところをつらつらと書いてきたわけですが、好きな方にとっては何言ってんだよ最高だろうが!となることもわかっているので本当にサラッと流してくださいね?

最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。



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