恋しさとせつなさと心強さと(「オンリー・ザ・ブレイブ」ネタバレ感想)
目次
初めに
どうも、レクです。
今回は感想を書いてなかった映画『オンリー・ザ・ブレイブ』についてちゃんと語っておこうかと、この映画を選ばせていただきました。
タイトルはふざけてますが、内容は至ってマジメであります!
最後までお付き合いいただけると幸いです。
作品概要
原題︰Only the Brave
製作年︰2017年
製作国︰アメリカ
配給︰ギャガ
上映時間︰134分
映倫区分︰G
解説
「オブリビオン」のジョセフ・コジンスキー監督が、巨大山火事に命懸けで立ち向かった消防士たちの実話をもとに映画化した人間ドラマ。学生寮で堕落した日々を送っていた青年ブレンダンは、恋人の妊娠をきっかけに生き方を改めることを決意し、地元の森林消防団に入隊する。地獄のような訓練に耐えながら、ブレンダンはチームを率いるマーシュや仲間たちとの絆を深め、彼らに支えられながら少しずつ成長していく。そんなある日、山を丸ごと飲み込むかのような大規模な山火事が発生する。キャストには「ノーカントリー」のジョシュ・ブローリン、「セッション」のマイルズ・テラー、「クレイジー・ハート」のジェフ・ブリッジス、「ビューティフル・マインド」のジェニファー・コネリーら実力派が集結。
オンリー・ザ・ブレイブ : ポスター画像 - 映画.comより引用
感想
仕事と家族、信頼と愛情。
ダメな男のサクセスストーリーだけでなく、人生とは何か、命の尊さについても真摯に語りかけてくる。
人々を守るために危険な仕事の任務に就く。
しかしそれが、愛すべき家族との乖離を生んでしまう皮肉。
そして、森林の火災と生命の灯火という対比が自然の非情さを突きつける。
タイトル『オンリー・ザ・ブレイブ』。
勇気と無謀は違う。
唯一無二の勇気とは家族や友人、愛すべき人々を守る強さ。
犠牲の上に成り立つ命はない。
助けられる命も助ける命も同じ、かけがえのないものなんです。
ブレンダンが背負うものが大きすぎて観ているこっちまでもが辛くて苦しい。
以下、ネタバレあり駄文です。
考察
劇中のある2つの台詞が後に僕の心を掻き乱すこととなる。
一つはエリックの妻が言った台詞。
"相手との関係で人は変われる"
善し悪しに関わらず、人というのは誰かに影響を与え、そして影響されるもの。
子供ができて更生するために森林消防隊員となったブレンダンはエリックと出会い変わり始める。
そんなブレンダンを若い頃の自分と重ねてしまうエリック。
この師弟にも似た関係がエピローグに繋がるんです。
ここで言う関係というのは何も直接的に接することが全てではない。
例えばSNSでの発信、投げかけられる言葉ひとつでも誰かに影響を与え、影響されるものです。
それは映画も然り。
映画が人に与える影響も必ずあります。
何度かTwitterでもお話したことがある持論なのですが
僕にとって映画はあくまで娯楽であり"映画は人生"といった大それた事は言えません。
それでも、"自分のための映画だ"と感じたり"価値観を変えてくれる映画"は存在します。
そういった映画と出会えた時、映画鑑賞が趣味で良かったなと素直に思えるのと同時に、映画が娯楽という枠を超えた瞬間でもあるんですよね。
映画との関係性、向き合い方ひとつで
今作「オンリー・ザ・ブレイブ」がこの映画を観た誰かの仕事観、家族観、人生観を変えるかもしれない。
もう一つの台詞はエリックの言葉。
"人は時に誰かの問題でも自分に重ねてしまう"
物語の大半は消防隊員の日常が描かれます。
主にエリックとブレンダン、二人の男の仕事と家族の両立への苦悩や葛藤です。
観客である我々はそんな日常、言い換えるなら映画的ドラマを通して、隊員たちの人生を追体験させられる。
だからこそ、残された遺族、そして唯一生き残ったブレンダンのサバイバーズ・ギルトに対して感情移入させられるのです。
もうこのシーンはずっと号泣ですよ。
溢れ出す涙を止めることができませんでした。
改めてもう一度言おう。
"人は時に誰かの問題でも自分に重ねてしまう"
映画として描かれる劇中の登場人物が抱える問題に観客が重ねてしまう。
この台詞とこの映画の本質が見事にリンクするんですよね。
"実話に基づく映画"としては100点満点なのではないか?
これも持論なのですが
映画とは客観的に観るものだと思うんです。
なぜなら第四の壁と呼ばれるものがスクリーンと観客の間には必ずあるから。
映画によっては劇中の登場人物が観客に向かって台詞を語るといった謂わば第四の壁を破る演出もしばしば見られますが、基本的にはスクリーンと観客の間にはフィクションとリアルといった明確な一線があります。
ただ
客観視していたものが主観に変わる瞬間、フィクションとリアルの境界線を濁す映画作品があるのも事実。
感情移入が最も近い感覚だと思うのですが
リアルにいる自分がフィクションの中にいる登場人物と同化する瞬間というものがあったりするんです。
そういう映画って鑑賞中に心を揺さぶられるだけでなく、鑑賞後に余韻に浸ったり、帰宅して、数日が経ってふと反芻したり。
いつまでも自分の中に留まり続けるんですよね。
少し話が逸れたので戻しますが
このエリックの台詞が正しく僕そのものだったんです。
めちゃくちゃ共感しちゃって鑑賞後になんかグッときちゃいました。
今作『オンリー・ザ・ブレイブ』は上記でも述べた通り、消防隊員たちの日常ドラマが主軸です。
特にブレンダンとその家族よりもエリックとその妻の関係性が強く描かれていたように思います。
エリックが何故ブレンダンを雇うことにしたのか。
何故子供は作らないと頑なに拒んでいたのか。
何故ブレンダンの退職を素直に認めなかったのか。
エリックが生きてきた人生を深読みしてしまいそうになるこの構成をラストの火災が一気に全てを飲み込んでしまうんですよね。
今まで散々やってきた迅速だと評価されるほど鍛え抜かれた訓練ですらも無意味になるほど。
他人事で非常に申し訳ないのですがあえて言わせていただくと
この喪失感って、命が失われる儚さそのものなのでは?
とさえ思ってしまう。
改めて冷静になって見てみると
喪失感の後に来る虚無感が、クライマックス後の遺族やブレンダンに感情移入させやすくしたのではないか?と思えてくるんですよ。
そして、これが実話である。
つまり、現実に失われた命がそこにあったという事実がじわじわと追い打ちをかけるように襲ってくる。
もし仮に、ここまで計算されて作られた映画の構成だとしたら、この映画は本当に"実話に基づく映画"としては100点満点なのでは?(二回目)